第66話
『うーん……まぁ、本当にざっくりと言えば、お前の体の中に正方形のそこそこ大きな箱があって、その中に入っていればお前との感覚を共有することもできるし、お前自身が稀有な魔力を持っているから心地いいのもあるんだろうな』
「……私の魔力は、それほどのものなのでしょうか……。そんなに、価値が高いものなのですか?」
『それ』
「え?」
『あまり不安に思うな、ステラ』
「……で、ですが…」
『お前のその不安や恐怖が、俺たちが離れられない原因だぞ?』
「……わ、私のせいで……」
『あー……深くは考えるな。だが、お前が不安に思って仕舞えばしまうほど、俺たちはお前を心配する。離れるなんてできないだろう?』
「…….……それ、は」
『堂々していればいい。お前は、あのマリンフォレスの王子の婚約者で、伴侶になるのだろう? ならば、自信をもて。大丈夫だ。それに、別にここから離れたからと言って、このロトメールという国からオレたちの加護が消えるわけではないしな』
「そ、そう、なのですか……?」
『ああ。なんなら世界中にだって加護をかけてやるさ。だが、それをすると諍いが起こるだろう。大規模なものになれば戦争という名に変わるな。このロトメールがオレたちの加護を受けているのは、その戦争に積極的に参加しなかったからだ』
「……ですが、長い歴史の中では、」
『そこまで言い始めるとキリがないだろう? まぁ、もちろん、俺たちが好むものがここに集まっているというのも事実だが、それでも、ここの王族はオレたちをちゃんと敬ってくれるからな。上がそれをしなくなって仕舞えば、俺たちは限りなく見下されてしまう。そうやなった時、俺たちの怒りが爆発したらとんでももないことが起こるぞ?』
「国の消滅、ですか……?」
『国の、ではなく、世界の、だな』
その返答に、驚いたのと同時にやっぱり、という感情も混ざる。それが目の前の人に伝わったのか、彼は苦笑を漏らした。
『そういう事だ。別にお前たち人に嫌がらせをするためにお前から離れないといっているわけではない。ちゃんと敬いを続けてくれるのならば、加護は続ける。それがなくなったとわかったら、加護を解く。それだけだ』
そう言って、火のエレメント様は私の頭をぽんぽんと撫でてから、そのままふっと姿を消してしまった。
しばらく、どうしようかと悩んでから、私はよし、と決意してそのまま自室を出た。
あとは、私のわがままを通せばいいだけだ。
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