第64話
ステラとマレの婚姻が進まないのも、実は彼らがいまだにステラと契約状態にあるからである。
そもそも、ロトメールという国家は、このエレメントの好むものが多いのだ。地水火風それぞれが好むものは異なるけれど、それらが一様にこの場に揃っている。だからこそ、ロトメールでは魔法という奇跡を使うことができ、この場で生まれたものに、エレメントが勝手に祝福を与えるがために、この国の人間は魔法を使えるのだ。
しかし、今まで好き勝手にこのロトメールを人の見えないところで徘徊していたエレメントがステラというたった一人の人間によってステラ自身に縛り付けられてしまった。
ステラがこのロトメールから出て行って仕舞えば、エレメントもステラについていくことしかできなくなり、この場からエメレントがいなくなってしまう。
それでは、国が困るのだ。
結果、今はステラにエレメントとの契約を破棄するように働きかけていて、実際にステラもそれに同意し、エレメントたちを元の場所に帰そうとするのだけれど、エレメントたちがそれを断ってしまった。
――曰く。
『人の世もなかなか楽しそうだから、しばらくこの愛し子に寄生するねー』
ということらしい。
契約の証に、ステラの右手の人差し指には、四葉のクローバーの形をした、しかしその葉がそれぞれのエレメントの色に染まっているという不思議な指輪が付いている。
それぞれの色がそれぞれのエレメントたちの契約の証であるというのは一目瞭然で、ステラは大いに戸惑ったという。
もともと無理やり連れてきてしまったのだから、ことが終わればすぐに謝罪・感謝を伝え、そのまま元の場所に返すつもりでいた。それが一転。エレメントたちが人の世に興味を待ってしまい、帰らなーいとのたまい始めたのだ。
困惑するなという方が無理である。
「あ、あの、エレメント様……」
『契約破棄以外なら聞いてあげる。何?』
『私も同じですわ。なんでしょう?』
『甘いものちょうだい』
『うむ、ではオレは辛いものが欲しいな!』
「……いえ、あの、契約破棄のことしかお話はないのですが……」
『嫌だね』
『嫌ですわ』
『や』
『断る』
「………………」
終始この調子なのだから、もうどうすればいいのか全く分からない。
それをそばで見ているシエルとジュードもどうしたものかと悩み、マレはロトメールの人間ではないため、エレメントの姿が見えないため状況としてはふんわりとしか分からないけれど、ステラが困っているということだけはわかるため、こちらも困り顔だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます