第59話

『あら、おはようございます』


『ようやく起きたか?』


『なんでもいいけど、解放してくれない?』


『まあまあ、取り敢えず、話を聞こうか』



 私の目にうつっているのは、男女二人ずつ、だと思う。


 青髪のショートヘアの女性に、オレンジの髪の筋骨隆々な男性。真っ赤な長い髪を持つ繊細な体つきの男性に、薄い緑の髪を無造作に括っている……多分女の子。


 え、ととぼけた声が私の方から漏れてしまった。



『まぁ、あなたが私たちをこちらの世界に召喚してしまったのよ?」


『そうさなぁ……いきなりで流石に驚いたが』


『どうでもいいから、早く帰してくれない?』


『だから待てと言っているだろう。このお嬢さんの願いが先だ』


「…………私は、無理やり召喚してしまったと……?」



 呆然と呟きながら、私はそれでも必死に頭を回転させる。このままいつまでもこの方達がここにいてくれる保証などどこにもない。むしろ、緑を持つ人はさっさと帰せと言っている。


 いや、帰すは帰すれけど、まだ私のやりたいことが何もできていない。


 虎の威を借りる狐状態を作り上げなければならないのだから、今帰すわけにはいかない。


 私は立ち上がった。私に心配そうに寄り添うマリンフォレス様が少しだけ顔をしかめたけれど、それは今は無視する。


 そして、会場に向かって声をあげた。



「――これが、私がロトメールの人間という証です!!」



 どん、と響くそれに、周りも驚いたけれど、私も驚いた。こんな声が出せただろうかと一瞬考えたけれど、すぐに私の声に魔力が帯びているのを感じる。



(地のエレメント様の力……)



 ならば、あとできちんとお礼を合わなければ。けれど、今は後回しだ。


 私は、ゆっくりと“妹”であったフルールに向き直った。


 その美しい顔を蒼白にし、私を怯えた瞳で見つめるアクアマリンと目が合う。


 そのことに、何も感じないのかと言われれば、否だ。私を慕っていないとわかっていても、それでも“妹”として接してきた子だ。胸が痛むのをかすかに感じつつ、私はそれでも言葉を発した。



「フルール・フロル、あなたに、罰を下します」


「な、なに、を……」



 怯えた声で、震える喉で、私に必死に食らいつくのは、私が憎いからなのだろう。けれど、それでいい。



「あなたから、一時的に王族の身分を剥奪します」


「な……っ!?」


「市井に降りて、そこで生活をしなさい。それが、私があなたに与える罰です」


「なに、言ってるのよ! わたしくから王族の身分を剥奪!? 市井に降りろ!? バカにしないで!!」



 フルールが、私に掴みかからんばかりの勢いで吠える。しかし、シエル様がすっと私のそばにより、声を投げかけた。

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