第58話
そんなジュードにも声をかけてくる存在が
『……へぇ。君がボクの属性か』
はっとして見上げれば、そこには少年なのか少女なのかわからない人物がふよふよと浮いていた。困惑しながらも縄とか声を出そうとしたその瞬間。
『…………弱そうだね?』
「…………………………」
その切り込みに、うまく返す言葉などジュードに思いつくはずもなく、固まってしまう。
『まぁまぁ、風の! そんなことを言ってはかわいそうでしょう? こちらの王女様よりは魔力量は多いのだから、彼女より弱いわけではないのよ?』
『まあ、純粋な力だけを見ればね。けど、なんか弱そう』
『そんな正直に……』
否定してくれるわけではないんだ、とシエルとマレは思う。そして、ジュードはめっぽう落ち込んだ。
「……どうせ、どうせ俺なんか……弱々しいですよ。姉上にも姉様にも遠く及ばないぐらい弱いですよ。いいもん、知ってるもん……」
「ジュード、そんなにも落ち込むな」
「そ、そうよジュード! 我が国ではあなたはとても強いのだから!」
「いいんですよ。どーせマレの従者という立場にいても違和感なんてないくらい、王族の威厳なるものは俺には備わってないんですから。誰も疑わずにマレの従者として扱ってましたし? どーせマレの方かっこよくて、王子様っぽく見えますよ。平々凡々の俺のことなんて気にしないでください」
ものすごく面倒際方向に向かったことだけはわかったのか、宙に浮いているその存在達も若干引いている気がしなくもない。
そんなジュードをなだめていると、マレの腕の中でステラが身じろぎをしたのを感じる。
「ステラ?」
マレのその呼びかけに、ゆっくりと目を開いたステラのその瞳の色は、疑いようもないほどに、真紅に染まりきっていた。
**
意識が浮上するのを感じる。暖かな腕に包まれている安堵感を感じながら、私は目を開けた。
見えたのは、あまり見慣れていない、それでも見覚えのある天井。そして、私を覗き込んでいる、碧眼を持つ王子様――。
「…………マリン、フォレス様……?」
「ああ、良かった。目が覚めたんだね」
「……私は、何を……」
「さぁ、私は君たちみたいに魔法を使える人間ではないから、あの場で何が起こったのかなんてさっぱりわからないんだ」
「……っ、そうだ、エレメントの方々は……っ!?」
あの空間にいたのは間違いなくエレメントの人たちだ。声だけしか聞こえなかったけれど、感じられる力は、私にそう確信させてくれていた。
慌てて周りを見回して、そして、目に写ったものを見て、ぽかんとしてしまった。
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