第57話
エレメントの力を手に入れるには、一度本国に帰らなければ無理なはずなのに、今ステラの体からは溢れんばかりの魔力が漏れ出ている。
いくら多いからと言ってもここまでこぼれ出てしまっていては最悪命に関わってきてしまう。早くなんとかしなければと焦った頭で考えていると、小さくうめき声が聞こえてきた。
「!? ステラッ!?」
「姉上、マレですよ! マレ、マレ、大丈夫ですか?」
「ぅっ……、私は、なんとか……それよりも、ステラは?」
「……あなたの腕の中にいます」
「……ああ、離してなかったんだね。よかった」
マレのその言葉を複雑な気持ちで聞きながら、ジュードはマレの腕の中にいるステラを見つめた。いまだに目覚める様子はないのに、彼女から溢れ出る魔力はどんどんと増していく。
早く、早く、なんとかしないと、ステラが……っ!
そう、気持ちが焦り始めた時だった。
――ぱぁんっ、と何かが破裂するような大きな音が響き渡って、あたりが一層悲鳴に包まれる。
けれど、シエルとジュードは違った。悲鳴をあげることはない。その大きな音には驚いたけれど、それ以上に驚くべきものが、二人の目には写っていたのだ。
『……ご、強引だなぁ……』
『あら、でも現世には出てきたみたいね?』
『ちょっと、ヒトの肉体なんていらないんだけど!』
『まぁ、きてしまったものは仕方がないだろう。諦めよう』
何が起こっているのか分からなくて、シエルもジュードもぽかんとして見上げている。その二人の視線に気づいたのか、ふと目があった。
『あら。あらあらあらあら、まぁ! 私の属性を持つ王女様ではないですか!』
「え、え……?」
『その後はどうかしら? あなたは幼かったから覚えたいらっしゃらないかもしれませんが、うまく使いこなせていますか?』
「え、えっと…………。だ、大丈夫、です……」
『そう? ああ、でもあまり無理につかわないでくださいね? あなたは、ただでさえ弱いのだから、あまり使いすぎると身を滅ぼしてしまいますもの』
「き、肝に、命じます……」
突然、ふわふわと浮いている――本当に空中に浮いていたのでそう表現するしかない――女の人に、嬉々として話しかけられたシエルは戸惑いながらもなんとか言葉を返した。
ロトメールの第一王女という立場がそれを成し遂げてくれたのかもしれない。
それを隣でぽかんとしながら聞いていたジュードは、そんなシエルの切り返しに感心しながら拍手を内心で送った。さすが、将来ロトメールという最大の国家を背負う者。なかなかに動じない。
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