第49話
困惑しかできなくて、私はマリンフォレス様を見上げることしか出来ない。
「……今は、私の言葉だけを信じて。お願いだ。そして応えて。あなたは、私が好き? それとも、嫌い?」
「………………」
好き、と言いそうになるのをぐっと飲み込んで、私は口を引き結ぶ。迷惑はかけたくない。相手はあの最大国家の第二王女様だ。その方に迷惑をかけるのも嫌だ。
だからこそ、私が口を引き結んでいると。
「――この世界に、“魔法”があるのは知っているかしら?」
ゆったりと、シエル様が会場全体に聞こえるような声でそう問いかけてきた。
「突然、何をいい出すのよ!?」
「質問に答えてくれるかしら? 私は、知っているのかと問うているのよ?」
「し、知ってはいるわよ!」
「そう? ならば、それを使うことのできる国は? それを使うものたちの特徴は?」
「そ、それは…………」
「あら、知らないの? 王族であれば
「……っ」
「まぁ。知らないのならば仕方がないわね? 親切な私が教えて差し上げるわ。それと、年上に対する言葉遣いもね」
シエル様がフルールと睨み合うようにしてそう言い放つ。とは言っても殺してやるとばかりに睨んでいるフルールとは違い、シエル様は悠然と構えて簡単に受け流しているようではあるけれど。
「この世界には、たった一カ国だけ、“魔法”を使うことを許された国があるのよ。それは、我が国『ロトメール』。そして、魔法を使うことを許されたものは、その“瞳”に証が出るの」
「証……?」
私が思わずこぼしてしまった声に、シエル様が反応し、私の方を向いて、優しい微笑みを向けてくれた。
「そう。瞳に証が出るの。よく見て、私とジュード。確かに容姿は似ているわ。姉弟だもの。けれど、たった一箇所だけ。違うところがあるでしょう?」
「…瞳の色の、濃さを言っておられるのですか?」
「そう。私たちは体内に宿る魔力量によって瞳の色の濃さが違ってくるの」
“魔法”。“魔力”。正直、それはどこかのお伽話を聞いているような感覚だった。それでも。
「…………ロトメールの王族は、紫の色の瞳のはずです。だとすると、紫の色に近ければ近いほど、魔力というものは少ないと言うことですか?」
私の疑問に、シエル様は笑みをより一層深めて、答えてくれた。
「――その通り。だから、私は魔力が少ないのよ。でも、ジュードを見て。あの子は少し赤みが強いでしょう? 魔力を持つものは赤い瞳をしていると言われているわ。だから、あの子は私よりも魔力が多いの」
「それでも、俺はとある人には遠く及びません」
ジュード様の言葉に、困惑してしまう。そして、私自身がハッとして咄嗟に手が伸びてしまった。
まるで、私のその行動を待っていたかのように、シエル様がさらに笑みを深くした。
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