第46話

「――第二王者殿下の、ご入室です」



 どこの奴なのよ、と思い、視線を向けて、フルールはそのアクアマリンの瞳をこれ以上ないほど見開いた。


 フルールの視線の先にいるのは一人の女性。


 くすんだ金の髪は高く結い上げられていて、それでも、多少の後れ毛をわざと残しているのか、うなじにひっそりとかかっている。


 夜会のため、濃いめの化粧を施されているが、それは彼女の美しさを最大限に引き出し、際立たせている。そして、その身を包んでいるそのドレス――誰がみても、その色は――。



「――ああ、よくお似合いだ。姫君」



 その会場の誰もが驚き隠せず、そのたった一人の女性に注目している中で、彼女が纏っている色と同じものを持つその人が、彼女に声をかけた。



「やっぱり、ペアルックにするべきだったかな?」


「何を言っているんですか、マレ。そんなことさせるはずがないでしょう」


「そうねぇ……、できれば結婚を済ませて、きちんと夫婦になってからにしてちょうだい?」


「姉上っ! それでま認めませんから!!」


「……ねぇ、ジュード、私の時よりも反対が強いのではなくて? というか、私の時はあんなにも早く結婚しろと急かしていたくせに、あの子にはそれを言わないのはおかしくないかしら?」


「そんなことはありません、と言いたい出すが、今までのご自分の行動を省みてください」


「…………ジュード……」



 そんな二人の会話をよそに、マレはさっさと彼女のそばに歩み寄り、その手をそっとすくい上げた。



「こんばんわ、お姫様」


「……あ、あの、マリンフォレス様……、私は……」


「よくお似合いです。本当に。タイか、アクセサリーをやっぱり同じにしておけばよかったな」


「あの、こ、こういうことは、ちゃんと婚約されたご令嬢がなされるべきです。私では、その……」


「うん。だから、婚約者にしているんだよ」


「………………へ?」


「私は、自分の婚約者でなければここまでのことはしないさ。そこまで優しい人間ではないからね?」


「いえ、あの…………」


「ああ、でも本当に美しいね。誰にも見せたくなくなってしまう……」


「え、あ、あの……?」


「うーん……抱きしめて隠して仕舞えばいいかな?」


「……っ!?」


「そんなことは!!」


「させるはずがありませんでしょう!!」



 突然、両サイドから腕を引っ張られて、体を後ろに持っていかれる。


 そこには、眼を見張るほどの美人と、美青年が立っていて、“フレスカ”は眼を白黒させることしかできなかった。

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