第45話
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両親とマレが会話をしているのを聞きながらも、フルールの意識はマレだけに向いている。あの美しく高貴な人が、自分の婚約者――いや、夫となる人なのだと信じて疑わない。
ああ、早くあの人と甘いひと時を過ごしたいのに、と考えていると、声が響き渡った。
「――ロトメールの第一王女様、ならびに、第一王子様がご入場です」
その声に鬱陶しさを覚えながらも、入場するという第一王女の程度と、第一王子の程度を見るために視線を向けて、フルールは目を見開いた。
真紅のドレスを身につけ、凛とした佇まいの女。長い金の髪は綺麗に一つにまとめ結い上げられており、そのうなじが妙な色気を醸し出している。
ドレスと同じような真っ赤な紅をさしたその唇には、妖艶な笑みをひっそりと浮かべており、それがなぜかミステリアスな雰囲気を醸し出している。
その独特の雰囲気に、その目を見張るような美しさに、男女問わずほぅと息を吐き、ロトメールの第一王女に目を奪われていた。
しかし、フルールの驚くところはそこではない。いや、そこもたいそう驚き、そして腹が立ったけれど、そこはまた別の問題だ。
そのロトメールの第一王女とともに入ってきた第一王子は、どこからどう見ても……。
「……な、なんでジュードが……っ!?」
第一王女と同じ髪色のその髪を、軽く固めているのか、スッキリとした顔が輪郭良く見えるようにされている。マレと同じように黒を基調とした衣服を身につけているが、彼ほどの黒は強くなく、よくよく見れば黒と言うよりは深い紺色のように見えた。
銀色のモールをつけたその衣服に、フリルのタイ。その姿はどこからどう見ても、マレの従者をやっていたと言う“ジュード”とは違うのに、ジュードにしか見えない。
そして彼女は――歓喜した。
(まさか、マレ様の従者のフリをしてわたくしを見にきてくれたのかしらっ? ああ、わたくしはなんて罪作りな女なの!)
扇でその口元を隠しているにも関わらず、彼女のその表情と思考は、マレとジュード、それにロトメールの第一王女であるシエラにはお見通しで、その三人からこれ以上ないほどの侮蔑の視線を向けられた。
しかし、その侮蔑の視線でさえ、フルールによって変換に変換を重ねられて仕舞えば、それは、男からの視線は自分に見惚れているため。そして、女からの視線は、自分の可愛さに嫉妬しているためとなってしまうのだから不思議だ。
自分自身にうっとりとしていると、再び、他国の客人の入室の声がかかった。
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