第42話
*
目覚めてから、私は自分が驚くほど深い眠りについついたことを自覚する。
慌てて起き上がって、急いで身支度を整えようとした時、すぐそばにシエル様がいたことに驚いて、あろうかとかそのまま転んでしまった。
どたん、とそこそこ大きな音がしてしまい、シエル様は驚いて目を覚ましてしまったし、寝室の扉の向こうからは心配そうな声をかけてくれるアレク様がいて、恥ずかしさでどうにかなりそうだった。
心配そうに声をかけ続けてくれるアレク様に、寝起きのシエル様が声をかけてくれてなんとかその場は収まったけれど、私にとって、その後も大変なことになった朝の記憶は、まだ新しい。
「…………あの、わ、私には似合わない、ので…………」
「そんなことないと言っているのよ。いいから、大人しくしていなさい。目にものを見せてやるのだから!」
「そ、そんな……あの…誰に対してですか? 私は普段通りの格好で別に問題はないのですが……!」
「私が気にくわないわ。それに、オシャレは大事なのよ。ほら、コルセット締めるからお腹に力を入れておきなさい。じゃあ、あなたたち二人はこの子の身支度をお願いね。後の二人は私の身支度を手伝ってちょうだい。一応部屋の外にアレクを置いてきたから、時間はどれだけかけてもいいわ。けど、急いでね。面倒をアレクに押し付けるばかりはできないからね」
「「はーい!」」
「「かしこまりましたー!」」
現在。私がどこにいるのかというと、離れの塔から連れ出されて、シエル様が滞在のために当てられたという部屋にまで連れてこられていた。
その場には、シエル様がおそらくロトメールから連れてきたのだろうメイドさんが四人だけいて、シエル様がか帰ってくるなりきちんとお出迎えをしていたのを呆然と見つめながら、私はアレク様の背中に隠れていた。
失礼なことはわかっているけれど、元来私は人前に出るのは苦手で、それが初めての人ならば尚更なのだ。いままでフルールと散々比べられていたからだ。
それが、今回ははっきりとしたお顔を拝見はしていないけれど、ものすごい美人さんな気のするシエル様と共に行動するなど、私には荷が重すぎる。
ここは、ものすごく失礼だけれど、アレク様を盾にしておかなければ、私の心の平穏がなくなっていく。
「……あの、姫さん?」
「ご、ごめんなさい、ごめんなさい!」
「いや、謝られても仕方がないんだけどさ。僕、流石にここにはいられないから出ていくよ?」
アレク様の言葉に、私は思い切り顔を上げて首をブンブンと横に振った。その際、彼が離れないようにしっかりとその腕を掴むのを忘れない。
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