第41話

「いい加減に諦めて、ジュード。悪いけれど、私は譲らない」


「……いや、ほんとはその方があの人にとっての幸せなんだってわかってはいますよ。あなたは好きなものをすごくすごく甘やかして、可愛い可愛いをする人ですから」


「そうだねぇ。昔ジュードにもそんな時期があったね?」


「いつの頃からか、いじめる側に回ってましたけどね!」


「それはほら、成長させないとと思って、心を鬼にしたんだよ?」


「そんな嘘くさい笑顔とともに嘘を言わないでください。てか、ちゃんと知ってますから! みんなが面白がってるってしまってましたから!!」


「まあ、ロトメールのみんなが優しいのは変わらないんじゃない?」


「優しさと言う名の嫌がらせに、何年耐えてきたと思ってるんですか!?」


「2年くらい?」


「そんなに短くないでしょ!?」



 きーっ、と怒りをあらわにしているジュードを笑いながら、マレはそれでも真剣に言葉を重ねた。



「実際問題、彼女はとても優秀だったよ。たしかに、閉じ込められている期間が長かったからなのか、自信がなさげだったが、それでも、本で知識を集めらそれを己だけで消化し、ものにしていたんだ。まだ、小さい頃からね。時々危ういところはあったにせよ、自己犠牲が過ぎるにせよ…………。“国”のことを考えて行動していたからね」



 フルールの無礼すぎる態度に何度も青ざめては、マリンフォレスという大国を背負うマレに、“フレスカ”は何度も何度も考えて切り抜けてきた。


 ジュードへの態度が過ぎたあの時だって、彼女があの行動をしなければ、マレは間違いなく、あの場でフルールを切り捨てていた。物理的な意味で、だ。


 しかし、それを止めたのは他でもない“フレスカ”だ。


 ジュードがちらと話したロトメールのことまでも計算に入れて、国同士が喧嘩しないようにと動き回っていたのだ。


 それを思い出して、口元に笑みがのる。



「初めて出会った瞬間から、私は彼女がとても可愛いと思ったんだから、運命だよね、ジュード?」


「……そう言われると、全力で邪魔したくなります」


「障害になってくれるのか? それはそれで、彼女への思いを深めることもできる。それに、彼女に思いを深めさせることもできる」


「む、ムカつく!!」


「なんとでも。でも、もう手放してあげられないんだ。必ず、私の手元に引き寄せてみせるさ」



 そう言って笑みを深めたマレに、ジュードはもう何も言えなくなってしまった。




 ――夜が更ける。



 ――さぁ、終焉の時間を始めようか。

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