第40話

これは、本気で受けなければ先ほどの言葉通りの結末になる。


 それだけは回避しなければ……!



「もちろん、受けますとも!」


「あら、話をよくわかってくれて嬉しいわ、アレク?」



 ころころと笑うその女性に、ロトメール最強と言われるアレクも、流石に背筋が凍ったような感覚を味わわされたのはいうまでもない。








「……さて、ジュード。明日は別々の立場であの場所にいなくてはならなくなったね」


「そうですね。ありがとうございます、マレ」


「それは、何に対したのお礼だい?」


「俺のわがままを受け入れてくれたことへのお礼ですよ。あなたが援護してくれなければ俺はここに来ることもできなかった。あとは、この国でも、守ってくれたので」


「ま、守るのは当然だろう? それに、ジュードに会わせないのに私だけが先に会ってしまったら、お前は私を嫌っていただろうしね?」


「時と場合と状況によりますね」



 だから、その嫌われる時と場合と状況が揃っていたんだって、と内心で呟きながら、マレが苦笑をこぼす。



「それよりも、なんであの人を呼び出したんですか……?」


「ん? 一番手っ取り早いかと思って」


「……ちなみに聞きますが、何に対しての言葉ですか?」


「ん? 何って、当たり前だろう? 身分立場の差を分からせるんだよ。それに追加で、女の尊厳も踏みにじってもらおうかと思って」


「…………」



 えぐい。えぐすぎる。


 これは確実に、フルールのことを指して言っている。けれど、あの娘は一度ロトメールのシエルと顔合わせているのに怯んだ様子など何もなかった。


 神経が図太いのではないのだろうかと考えていると、マレが爆弾を落とした。



「ああ、なんかシエルね、名乗らなかったらしいんだけど、あの時に来てたお仕着せ効果なのか正体バレなかったらしいよ? ま、結果的にあの娘が勘違いに走ってくれたみたいだけどね?」


「……え。気づかなかった? 気づかなかったっ!? あんなあからさまな王家の証を持っている人を目の前にして!?」


「さあ? 外のことに興味がないのか知らないけど、何も学んでこなかったんじゃない?」


「…フロル国、おそるべしですよ……。というか、それならもういっそのことこの国滅んでしまった方が良くないですか?」


「多分、シエルが考えているでしょう。そこはもう任せるよ。私は、“あの子”が私のところに来てくれればそれでいいからね」



 マレのその言葉に、ジュードがムッとする。そんなジュードにマレがまた苦笑を漏らした。

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