第39話
「それにしても、この国あの王女サマ。すごい子でしたね?」
「はぁ? あんな奴を王女だなんて認めないわよ。この国には子供がいない。かわいそうな国なのよ」
「……シエル様? 流石にそれはかわいそうなのでは?」
「あのね、あんたも気づいていたでしょうけど、あの女は、所構わずに色目を使ってたのよ? マレにも、ジュードにも、もちろんアレクにもよ。あれは多分、城内にいる男にほとんどやってるんじゃない? まあ、面倒なことに、そこそこ顔が整った男にしかやってないみたいだけど」
「うーわー…………やめてくださいよ。それ自覚したくなくてめっちゃ現実逃避してたんですよ?」
「え、ごめん。気づいてて無視してるんだと思ってた」
「いや、気づいてましたよ? 無視もしてました。認めます。でも、なんか自覚したら終わりかなって思ってもいました!」
「ま、あの程度の小娘、脅威にはならないけど。……そうだわ! いっそ、明日あの女の目の前で、あの女に陶酔しているかもしれない男たちを目の前で奪ってあげましょうか!」
「いやいやいやいや。何性格悪いこと言ってるんですか」
「そうすれば、あの妙に自信持って自分が世界一可愛い、とかいう天狗の鼻も叩き折れるでしょう」
「どうやって誘うつもりですか!?」
「……本気にされたら面倒だから、アレクに剣技で勝ったらってことでいいと思うわ」
「責任重大!! 突然の胃痛がっ!!」
「拒否権はないわよ。ま、あんたがやらなかった私が直接やるけど。そのかわり、職務放棄とみなして、あんたを国外追放にしてやるわ。ああ、もちろん、他国に忠誠を誓われてうちの国に来られても困るから、剣は握れないようにさせてもらうけどね?」
「僕の地位と名誉を奪うだけでは飽き足らず、そこまで鬼畜なことをしますか、あなたっ!?」
「当たり前でしょう。私を誰だと思ってるの」
シエルのその言葉に、アレクががっくりと肩を落として、そうだった、と思いなおす。
今目の前にいるかの女性は、あの最大国家・ロトメールの次期女王。
あの国は男尊女卑などというものにとらわれることなく、一番最初に生まれた子供が次の王位を継ぐ。だから、歴史を紐解いても、女王様というものは多い。
そんな中でもシエルは期待に期待を背負わされ、それでもなおその期待の上を堂々と歩いていく女性だった。国のことを一番に考えているという一点において、彼女に勝るものはあのロトメールにはもう現国王様だけだろう。
いや、そんな父親の背中を見て育ってきたのだから、そう育つのは当たり前なのかもしれないけれど。
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