さあ、真綿で首を絞めていこうか

第23話

大きくため息をついて、疲れを口から吐き出す自分を想像する。


 そうしなければ、自分を保てる自信がなくなってしまうからだ。


 マレのその様子を見ながら、ジュードも同じように息をつく。ジュードの方はそこまで大きなため息ではなかったけれど、それでも疲れているのはマレと同じだった。



「……マレ、まだここに留まるのですか?」


「仕方がないだろう。安心と揺さぶりをかけなければいけないのだから」


「言ってること矛盾してるってわかってますか?」


「分かってるよ。安心はあの子娘に対してだ。揺さぶりはこの国の王様と王妃様」


「すごくすごく疲れたのですが……」


「それ、私にいうのかい? だけど、ジュードは出てきてはダメだからね。まさかあそこまで無知だとは思っていなかったんだよ」


「…………まぁ、それは俺もそう思います」



 あの日から、彼女を避けるような毎日を送っている二人は、目に見えて疲れた表情をするようになったのだが、どうやらこの国の人間にはそれが伝わらないらしく、疲れていると言っているにもかかわらず、あの無知な娘をよこしてきたのだから、一瞬そのまま縊り殺してやろうかと本気で思ってしまったのはまだ記憶に新しい。


 その時は幸運にもジュードが側にいたため、マレのその恐ろしい思考を読み取り、無理やりその場から引き離してくれたけれど、あの場にジュードがいなければ本気で危なかったと自覚している。


 それからは出来るだけジュードに側にいてもらうようにした。もともと従者としてついてきているのだから当たり前なのだが、それでも彼女の妹に会う時には部屋に残していくようにした。


 一度連れて行ったら、あの娘はジュードをまるで奴隷のように扱おうとしていたので、この場合、側にジュードがいた方が自分がブチキレると自覚したからだ。


 そのことに関してはジュードもわかっているのか、何も言わずにマレの言葉に従ってくれている。


 二人して、再び大きなため息をついた。



「あー……やばいな……。彼女に会いたい……」


「……マレ、我慢してください。俺だって我慢してます」


「あのね、何度も言うけど、あの子はもう私のものだよ?」


「違います。断じて違います。ていうか認めません。ロトメールについたら、抗議します」


「…………お前」



 そんなことを話しながらも、ジュードはマレに手紙の用紙を差し出し、マレもそれを受け取ってさらさらと言葉を綴っていく。


 単純に自国とロトメールに手紙を書いているのだ。

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