第24話
なんとか今のこの状況を打開しなければ、自分がこの国を滅ぼすことを考えてしまう。けれど、それをしてはならないとなんとか理性とジュードが止めているからやっていないだけだ。
その二つのストッパーがなくなれば、この国に戦争を仕掛けて全てを壊してしまいそうになる。
「マレ、マレ」
「……なんだ?」
「恐ろしいことを考えないでください。顔に出ています」
「一応王太子としての教育を受けている私の表情を読むなんて、そんな芸当ができるのはジュードとロトメールの第一王女だけだよ」
「付き合いが長いんです。そのくらいできて当たり前でしょう」
「まあ、確かにね」
そう言いつつも、書き終わった手紙をそのまま封蝋する。自分の国の紋章で押さえつけて、ジュードにそれを渡せば、ジュードが窓辺に歩み寄って窓を開ける。
指笛を鳴らせば、ふわ、と一匹の鳥が目の前に現れた。
「さて。ロトメールとマリンフォレスに届けてくれよな」
そう鳥に声をかければ、その小さな鳥は「ぴぃ」と小さく返事のような鳴き声を響かせてそのまま羽ばたいていった。
「それで、マレ」
「なんだい?」
「あの手紙には何を書いたのですか?」
「ん?」
「…………マレ、まさか……」
「手っ取り早い方がいいだろう?」
「早すぎません!?」
「我慢の限界なんだよ。もうあの無知な小娘の相手をするのもうんざりだし、婚約者面して隣を歩かれるのもうんざりだ。夜までそばから離れようとしないのもうっとおしい。既成事実なんて作らないっつーの」
「マレ、言葉が乱れてます。落ち着いてください」
「今だけは許してくれ……」
相当なめんどくさい女に捕まったのだと、ジュードは改めて認識してしまう。
しかし、マレが仕掛けたと言うことは、今月中には片がつくだろう。
もともとの長期滞在を申請しておいてよかったのかもしれないと考えながら、ジュードはマレが部屋に持って来させていた紅茶を自分用に一杯だけ入れる。
「おい、ジュード、お前……」
「毒味ですよ毒味。大丈夫です。中和剤も持ってますし、なんなら飲んでもいます。俺をなめないでください?」
「……ああ……恐ろしいやつだよ、本当に」
そう会話をしながらも入れた紅茶に口をつけてジュードは味わうかのようにしたの上で液体を転がす。
ふむ、と頷いてとんでもないことを口にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます