第19話
そう考えて、私が頭を下げ続けていると、あまり聞きたくない声が聞こえてきた。
「あら、お姉様。何をなさっているの?」
「!」
「まさか、この方々に何か失礼なことをしたわけではないでしょう? わたくしのお姉様ですもの、そんな常識知らずなことはなさりませんわよね?」
「……フルール」
「お姉様、どうして外にいらっしゃるの? たしか、日に焼けるのが嫌で外に出たくないと、むかーしにおっしゃっていたではありませんか。こんなところに居たら、お姉様のその白い白いお肌が焼けてしまいますわよ?」
「……ええ、そうね。戻らせてもらうわ。フルール、この方達を、頼んでもいいかしら?」
「ええ、もちろんですわ! お姉様程度がお相手できる方々ではありませんのよ?」
「そうだったわね。じゃあ、よろしくね」
嫌味を嫌味として受け取ってしまってはいけない。
彼女は、フルールは、私のことを思っていってくれているのだと思わなければ。そうしなければ、私の心が壊れてしまう。
胸が軋むような痛みは気のせいでしかない。そう、思い込まなければ。
だから、受け入れて、この場を離れなければいけない。
「待ってください」
離れなければいけないのに、その一言に足を止めてしまった私は、すぐに後悔する。
もちろん、行動としては間違っていない。相手の呼びかけに反応し、立ち止まったのだから。けれど、選択としては間違っていた。“妹”がいる目の前でそれをしてしまったのだから。
けれど、止まってしまったものは仕方がない。私はそろりと後ろを振り向いて、制止を呼びかけた相手を見つめた。
「……なんでしょう、ジュード様……」
「日に焼けるのがお嫌いなのですか?」
「…………はい」
本当はそんなこと言った覚えはない。“妹”が私をこの場から離すための言い訳だろう。
私はどちらかと言えば行動的な人間だった。なにしろ、逃げ出そうとして窓から身を乗り出すぐらいだ。日の光が苦手なわけがない。それでも、肌が白いのは閉じ込めららている時間が長いのと、もともとあまり日焼けしない肌なのだろう。
窓辺で日光浴をしていても焼けていないという事はそういうことなのだと思う。
そんなどうでもいいことを考えていると、ジュード様は私の方に歩み寄ってくる。その最中に自身が来ている上着のボタンを一つ一つと丁寧に外し、ばさっとそれを脱ぎ捨てる。
「でしたら――」
そう声をかけられたかと思うと、気づけば私のすぐ目の前にジュード様がいて、気づけば、私は頭から何かを被せられていた。
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