第14話
「……大丈夫ですか? マレ」
「…………ここの王族は、一体己の娘をどういう風に育てたかったのだろうね?」
「マレ?」
「驚いたよ。まさか、こんな遅くまで引き止められるとは思っていなかった。しかも、あんな小娘に誘われるとは」
「…………は?」
マレの言葉の中で理解できない言葉があり、ジュードは思わず聞き返してしまった。
そんな当たり前の反応をしたジュードに、マレは軽蔑の笑みを浮かべて吐き捨てた。
「たかが15の小娘に、なぜ夜伽をしてやらなければならないのだろうな、ジュード?」
「え、いや、でもあの子、まだ婚約者すら与えられていないって言ってませんでした? え、まさかもう婚約者になってしまったのですか!?」
「そんなわけないだろう。おぞましいことを言うのはやめてくれないか……」
「す、すみません……」
はぁー、とため息をつき、マレはぐったりとソファーに身を預ける。全身で疲れたと言っている。
「……もう、逃げちゃおうかな。確認もできたことだし、ロトメールに報告はできるし」
「な、だめ、だめですよ! まだ諦めないでください!」
「そうは言っても、あんな頭の中が空っぽの小娘を相手にするのは骨が折れるんだよ。何を言っても意味のわからないことを返してくるし。探りを入れようとして彼女のことを聞いたら、本当に頭おかしいのかと疑いたくなるようなことしか言わないし」
「……マレにそこまで言わせるのは、逆にすごいと思うのですが……」
「ほんと、私もびっくりさ」
はっ、と吐き捨てるように笑い、マレはぐったりとさせていた身を起こして、ジュードを見た。
「とにかく、早々にここを出るか、もしくは違う手を打たないと私の精神的な問題が出てくるよ? まぁ、朝から夕方まであの子とともにいさせてもらってるからまだなんとかなっているけれど」
「……マレ、それについてとても言いたいことが」
「言っておくけど。あの子に会うなと言うなら、私がいま引き受けているあの小娘の相手をお前に押し付けるよ、ジュード?」
「………………イエ、ナンデモアリマセン」
「そう?」
ニッコリと笑って自分を見つめている目の前の男を、ジュードは敵に回したくないと思いつつ、とても複雑な思いをその胸に抱いたのだった。
「さて、どうやって仕掛けようか?」
苛立ちが相当溜まっているのだろうか。それとも、彼女の扱いに不満が溜まりすぎてこうなってしまったのか。
「……とりあえず、この国を潰すことは考えないでくださいね、マレ。一応、薬草栽培が盛んな国なんですから」
「もちろん、平和的解決はできるだけしようと思っているよ?」
ふふ、と笑ったその顔が笑っていないのを、ジュードだけが知っている。
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