第12話
「申し訳ありません……、私、とても失礼なことを……!」
「え、あ、いやいやいや。気にしていないので!」
「ですが……」
他人を笑うなんてそんな失礼なことをした罪悪感から気持ちが沈んでいく。
けれど、私が一番恐怖していることは、この人を笑ってしまったことではなく、このことが両親や“妹”の耳に入ってしまったらということなのだ。
こんな時にですらも、私は自分のことしか考えていなくて嫌になる。
想像をした瞬間に体が震えてしまった。
その瞬間。
「あの」
目の前の青年が、私に向かって話しかけてくる。
パッと顔を上げて彼を見つめれば、少しだけ気まずそうに、彼が私を見つめて、それでも言葉を紡いだ。
「……あの…あなたは、この大陸の最大国家のことを、ご存知ですか?」
「……えっと。それはロトメールのことでしょうか?」
「そうです! えっと、俺、昔その国にマレ……様と訪問した時、そこの王族の方とお話しする機会をいただいたのですが……」
「まぁ……すごいですね。王族の方と……」
「………………すごく、失礼な人たちだったんです」
「…………え?」
「人が真剣に話している時とかも、何気なくそこらへんを歩いている時でも、常に相手をおちょくることしか考えてなくて。引っかかるとめっちゃくちゃ笑われるし!」
「あ、あの、ジュード様……?」
「なんでこんなことをするのかって一度聞いたら、あの人たち、なんて答えたと思います?」
「……えっと……も、申し訳ありません……分かりません…………」
「単純に“面白いから”だって。面白いからってなんですかね!? 面白いからって!!」
……相当からかわれていたのだわということはわかった。けれど、逆にいうと、マリンフォレス様の従者であるはずの彼が、ロトメールの王族の方々にそれほどまでに可愛がられていたということの方が私としては驚きだけれども。
(この方……多分、17か18ぐらいよね? それなのに王族の方の覚えがいいって、将来出世間違いなしなんじゃ……?)
目の前の人を見つめながら、私はそんなことを思っていると、私と目があった彼が、私に向かって思い切り力説してきた。
「いいですか? あなたの先はどの態度が失礼だいうものになるのなら、かの最大国家の王族の方々は迷惑以外の何者でもなくなってしまうのですよ?」
「えっ!?」
「いや、事実迷惑なんですけどね。人のこと全然考えてくれないし。…………教えてくれなかったし」
「教えてくれない?」
「こちらの話です、すみません。とにかく、俺が言いたいことはですね、あなたの態度や言動は、別に迷惑でもなんでもないんです。普通のことなんですよ?」
そう言われて、私は少しびっくりした。
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