第92話
どうして、と。そう思う。
どうして受け入れようとしてくれるのかと。それは決して悪いことではなく、いいことなのだ。相手に自分を認めてもらえるというのは、とても幸運なことであり、それだけの価値が、己にあるという証でもあるのだ。
けれど、白紅麗はそれを受け入れることができないでいる。
受け入れた先に、裏切りがあると、すでに知ってしまったから、それをすることができないのだ。
「あなた達が……私に触れることすら、きっと良くないことなのよ……。私は、あの家で“妖”と言われてきたの。ただの疫病神なのよ……!」
「それは、サクラの周りの人間が勝手に言ったことだもん」
「ボク達には関係にことだよ」
「……で、でも……私は、……」
双子は、白紅麗を見上げて言葉を紡ぎ出す。その赤い瞳はまっすぐに白紅麗を見つめていて、その視線をそらすことができない。
藤色の瞳と赤い瞳がしばらくずっと交わり続ける。
視線を逸らしたいのに逸らせなくて、白紅麗はどうすればいいのかと戸惑いを大きくする。
「……サクラ、ボク達、本当にサクラが大好きだよ」
「……っ!」
「でもきっと、サクラはその言葉が受け入れられないんだよね?」
「そ、れは……」
「ううん、いいんだ。それは、…………その気持ちは、ボク達も分かるから」
「……!」
ゆっくりと、しかし、双子は確実に白紅麗の手を離さないように力を強くしていく。握られている両手からは、暖かさが感じられて、それだけでホッとするような、けれど、この暖かさを知ってはいけないのだと頭の奥で警鐘が鳴り響く。
それを知ってしまったら、白紅麗はまたそれに縋り付いてしまうと自身で分かっていたから。
強くなるその力に反して、白紅麗はその手を振りほどこうと動いてしまう。けれど、予想以上に双子の手を握る力は強くて、振りほどけない。
双子は、そんな白紅麗の行動を感じつつも、その手を離さないようにぎゅっと握り込んだまま、くるりと後ろを振り向いた。
そして――。
「「……ロシュの馬鹿っ!!」」
力一杯に叫んだのだった。
「……………………えっ?」
突然のその言葉に、ロシュはどう反応すればいいのかわからなくて、思わずそんな間の抜けた声が口から溢れる。白紅麗の方も双子の突然のその言葉に、抵抗を止めてしまい、思わず双子とロシュを見比べてしまう。
いま、目の前で何が起こっているのだろうか。
「ロシュの子供!」
「大人気ない!」
「なんであんな態度とっちゃったの?」
「サクラに嫌われるよ!?」
「嫌われてもいいならいいけど」
「……それだと、ボク達でサクラを二人じめできる!」
「そうだよね! ロシュ、嫌われて!」
「ボク達のために!」
勝手な解釈をして会話を進めていく双子に、ロシュは何も言えずにただ突っ立ってしまった。
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