第93話

はっとして、ロシュはいやいやいや、と言葉を必死に吐き出す。



「ちょっと待って、白紅麗を独占するなんて許せない。というか、君たち最初は白紅麗を嫌ってたじゃん! 離れなよ!」


「最初は最初でしょー?」


「今は違うもーん!」


「くっ、こういう時だけ子供を前面に出すから面倒なんだよね……っ!」


「なんでー? だって、ボク達子供だもーん」


「だもーん!」


「見た目が子供の姿ってだけじゃん! 君たちが生きている年数を考えれば、確実に年上だよ!!」


「…………えっ」



 ロシュの爆弾発言に、白紅麗は思わず小さく声をこぼす。しかし、少し興奮しているロシュには白紅麗のそのつぶやきは聞こえなかったらしく、言葉が続いている。



「だいたいね! 君たちは一回死んでるの! それでリアム様のこの“イル・イゾレ”に精霊として生き返っただけなの! 君たちは何百年生きてると思ってるの!? いい加減、もう少し大人になってもいいと思うけどね!?」



 ロシュから紡がれる言葉に、白紅麗は混乱しすぎて何を言えばいいのかわからなくなってしまい、黙る。


 双子はそんな白紅麗の手をやはり離さない。


 子供の小さな手は、しかし今のロシュの言葉をしっかりと理解したのならこの子達は子供という括りに入る子達ではなく……。


 と、ぐるぐると考え込んでしまう。



「……ロシュって、時々すごく馬鹿だよね」


「……うん」



 レプレとレプスは、思わずそんな言葉をつぶやいてしまった。


 ロシュはその言葉に言い返そうとしたところで、白紅麗が固まっていることに気づく。



「……………………あ」



 今更気づきましたというような、まずいという雰囲気でそんな言葉を小さくこぼしたのだった。



「で。ロシュはボク達の秘密をバラしてしまったわけだけど」


「……いや、君たちも悪い」


「ロシュが変な意地を張ったからだよ」


「……いや、うん、まあ……それは……認めるけれども……」


「でもそれって、言っちゃいけないことだってわかってたよね?」


「………………わかっていたけども……」


「「え? 何、言い訳?」」



 なんだろう。この目の前の光景。なぜこんなにも立場が逆転しているのだろうか。


 ロシュの方がこの子達の面倒を見ているような感じだったはず。それなのに、今白紅麗の目の前で繰り広げられているのは明らかに立場が逆転している。


 全くもって意味がわからない。


 おずおずの、白紅麗は双子から再び手を引き抜こうとしたけれど、やっぱり双子は強く手を握って離してくれない。


 混乱は収まりそうにない。

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