第89話

白紅麗の言葉に、ぐすぐすとしている双子が震えた声で問いかけてくる。



「「ほ、ほんとに……?」」


「ええ。本当。……ごめんね。私、すごく酷いことしてたね」


「「えっ、なんで?」」


「……歩み寄ろうとしてくれているあなたたちを、ずっと避けていたから……。私がもう少し勇気を持てればよかったんだけど、私は……それができないから……」


「「サクラ……」」


「……怖いの。ただ、それだけなの。…………ごめんね、二人とも。こんなお話はつまらないね」



 そう言って、白紅麗は双子を今一度ぎゅっと抱きしめて、離した。しかし双子は白紅麗の衣にしがみつき離れない。


 そんな二人の様子に、白紅麗は少しだけ苦笑して再び双子の頭を優しく撫でる。



「……こんな、臆病な私を、なんで気にしてくれているの?」



 それは純粋な疑問だった。


 決して、白紅麗も双子も、お互いに好意を持てるような出会い方ではなかった。それなのに、双子は今は白紅麗にとてもよく懐いている。


 だからこそ、不思議に思ったのだ。



「? なんでって言われても」


「サクラが、あったかいって分かったから?」


「私が、……あったかい?」



 その言葉が意外で、白紅麗は少しだけ驚く。繰り返された言葉に、双子は大きく頷いた。



「そう、あったかいの!」


「サクラ、あったかくて、好き!」


「…………」


「そばにいるとね、すごく安心したの」


「うん、ボクも!」


「レプスとお揃いだね!」


「うん、レプレとお揃いー!」



 きゃっきゃとはしゃいでいる双子を見て、白紅麗はふふっと少し笑った。



(……そういえば、白雪姫も私のことを慕ってくれていたのよね……。最初から演技だったのか、それとも、最初は純粋に好いてくれていたのか……分からないけれど……)



 ふとした時に、つい思い出してしまう。


 唯一、自分をあのかなどめ家で慕ってくれた存在。愛らしい容姿に、美しい漆黒の髪と、漆黒の瞳。大きな瞳は、いつも“白紅麗”を見つめてくれていたと思う。


 愛らしい笑顔に、気遣うような言葉。いつも、その言葉に、態度に、助けられていた。


 そう、たとえそれが偽りだったとしても、白紅麗は救われていたのだ。


 思い出せば思い出すほどに、胸が苦しくなる。


 何故と、どうして、が混ざり合っていく。


 思考がどんどん悪い方に偏って行っていると、突然にぎゅっと抱きつかれて、白紅麗は驚愕した。



「「サクラは、今ボク達と一緒にいるのっ!!」」



 その言葉に、白紅麗は驚きを隠せなかった。

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