第88話

真っ赤な瞳で白紅麗を見つめながら、双子は口を開く。



「「いつもみたいに頭なでなでしてほしいから」」


「……?」



 双子の言葉に、白紅麗は首をかしげる。



(いつもみたいって、どう言う意味なのかしら……?)



 そう思いつつも、双子は白紅麗の手が伸びてくるのを待っている。期待に瞳を輝かせている二人の期待を裏切ることなんてできなくて、白紅麗は手を伸ばして、双子の頭をゆっくりと撫でた。


 柔らかな髪に指が沈み、ふわふわと撫でれば気持ちよさそうに目を細める二人。そんな二人を見つめていると、あのウサギたちを思い出す。


 知らないうちにそばにいたあのウサギたちは、そういえばロシュが連れていってしまったなと思い出す。


 思わず、白紅麗が勝手にあのウサギたちにつけた名前を呼んでしまう。



「…………黒兎、白兎」


「「なに?」」


「……えっ?」


「「? だっていま……」」


「…………」


「「………………………………あ」」



 長い沈黙が流れた。


 白紅麗は驚きでなにもいえない。双子は気まずそうに視線を逸らした。



「……えっ、あの。ウサギたち……あなたたちだった、の…?」



 思わず、そう聞いてしまう。


 双子は無言でさらに視線をそらすために首を回した。しかし、頭に乗っている白紅麗の手から離れようとはしない。


 無言が続く。白紅麗は双子の頭の上に乗せた手をどうすればいいのかと戸惑う。


 離せばいいのかもしれないけれど、しかし、それで白紅麗が双子のことを嫌っていると思われたくもない。どうすればいいのかと躊躇っていると、がしっと両手首を握り込まれた。



「えっ」



 何事かと思い見れば、双子が両手を上にあげて、白紅麗の手首をがっしりと両手で握りこんでいる。



「あ、あの……二人とも、どうしたの……?」


「「きっ、嫌わないでーっ!!」」


「えっ!?」


「「騙してごめんなさいーっ!! でも嫌わないでーっ!!」」


「ちょ、っ、まっ、待って、だ、大丈夫だから!」


「「うわーんっ、サクラーっ!!」」



 収拾がつかなくなってきた。どうすればいいのかと頭で考えるよりも、白紅麗は体が動いた。


 寝台の上から降りて、握られている手首を多少乱暴にとりもどす。その瞬間の双子の絶望の表情を見て、白紅麗はしかしすぐにその両腕を広げて双子をまとめて抱きしめた。



「……!」


「サクラ……?」


「……嫌ってないよ」



ゆっくりと、言い聞かせるように白紅麗は双子にそう囁いた。

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