五章
気持ちと感情
第84話
白紅麗は、ロシュに連れられて今寝泊りをしている部屋に連れて来られる。そのままロシュに寝台に座るように言われ、おずおずと寝台に座った。
「……白紅麗」
「…………はい」
「なんで一人で帰ってきたの!?」
「…………えっと……ちょっと、頭が混乱してしまっていたからというか……、理解できないことが起こって、どうすれば良いのかわからなくなったというか……」
「なにそれ!?」
「……なんでしょう」
ロシュはぷんぷんと怒りながら白紅麗に怪我などはしていないかと質問を投げてくる。その心配に白紅麗は驚きつつも大丈夫と言おうとした時に、自身の足が痛みを訴えてきていることを自覚した。
なんだろうと思ってそこに意識を集中させれば、痛みがどんどんと増していく。
その意味がわからなくて、白紅麗は混乱した。
そんな白紅麗なら気づいたロシュは、大きくため息をついてしゃがみこむ。と、遠慮なく白紅麗の衣をひっ掴み、膝下ほどまで衣をたくし上げた。
「!? ロ、ロシュ様っ!?」
「……やっぱり。音がしなかったからおかしいと思ったんだよね」
「あ、あの……っ!? ロシュ様っ!!」
「とりあえず、傷薬……ああ、取ってきてもらわないと……仕方ない。レプレ、レプス!」
「っ、ロシュ様っ!」
「白紅麗、ちょっと黙って。こんなに血だらけにしてるのに、なんで気づかないかな……」
ロシュの言葉の強さに戸惑いを隠せなくて、白紅麗はそっと自分の足を覗き見て見た。
そして、目を見開く。
(あれ……私、沓……)
履いていたはずなんだけれど……と思ってしまう。足の裏の痛み。そして足の甲にある小さな無数の切り傷。数自体はそこまで深いものはないけれど、傷の数がたくさんあって驚いてしまう。そこからは血がジワリと滲んでいる程度なのだが、そのたくさんある切り傷のほとんどから出てきているため、見た目的には結構恐ろしいことになっている。
ロシュが怒るのも道理である。
白紅麗は謝ろうとして口を開く。しかし、言葉が出てこなかった。
黙ってロシュの治療を受け入れる。正直、放っておけば治るだろう思ったけれど、それを言ったらなんとなく怒られそうな気がしたから白紅麗はそれを胸の内に留める。
そんなことを思っていると、とたとたとた、と子供の足音が聞こえてくる。
それにハッとしたのは、その足音が部屋の前で止まったからだ。もしかして、あの双子が来るのではないのだろうかと思った瞬間、白紅麗は逃げようと体を動かす。しかし、それはロシュに止められた。
「どこに行くの、白紅麗」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます