第79話
二人で、意味もなく草原を歩く。さくさくと足元から音がなり、それが不思議でたまらない。
そんなことを考えながら歩いていると、リアムが白紅麗を呼びかける。それに答えるように立ち止まり、リアムを見上げた。
「……白紅麗、君が好きだ」
「………………え?」
「突然のことだから、君を混乱させるとわかっている。けれど、やはり
「待って、ください。私は、そんな風に言われるような……」
「君は、そういうと思っていた。けれど、我は君にこの気持ちを押し付けるつもりはない」
「…………」
「種族の特徴で、どうしても、
リアムの言葉に、白紅麗はただ困惑しながら聞くしかできない。
「だから、押し付けない。押し付けたくない。そのせいで、君が苦しむとわかっているから。君は、我と違って人間だから。この愛情を受け止めることは難しいと思う。同族でも、なかなかいないんだ。当たり前のことだ」
「…………」
「ただ、知っていてほしい。君に我の気持ちを。知っていてほしいんだ。決して君に無関心なわけではないと理解してほしい。いつだって、君のために動きたいと思っている。君に向かって声をあげたい。君に向かって手を伸ばしたい。この両腕で抱きしめたい。……この腕の中に、閉じ込めてしまいたい。そう、思うほどに、我は君が好きだよ、白紅麗」
リアムのまっすぐなその銀の瞳に見つめられながら、白紅麗は困惑を大きくする。
彼に好意を持ってもらうようなことを、白紅麗は何もしていないのに。どうしてこんなにもまっすぐに気持ちを伝えてくるのか。どうして、こんなにも綺麗な感情を、白紅麗に向けてくるのだろうか。
無意識に、白紅麗は体が逃げてしまっていた。
首を左右に振る。
「……私は……私は、そのように言われるような人間ではありません。……私は、綺麗じゃない……綺麗じゃ、ないんです」
「白紅麗?」
「もう、苦しみたくないんです……。私のせいで、苦しんで欲しくもないんです。私のせいで……璃は……っ!」
白紅麗のせいで、璃は輝かしいはずの将来をなくしてしまっていたのかもしれないのだ。白紅麗が、思いを告げてしまったから。全てを捨てようとしていたのだ。それを見計らったかのように入ってきた家族に、なぜ疑問を持たなかったのだろうか。
“妖”と言われ続けている白紅麗が、幸せになることを考えてしまったから。
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