第71話
白紅麗に与えた“加護”のつながりで、白紅麗のその心を読み取ったのだろう。とても、嬉しそうで、幸せそうな表情をしている。
そんなリアムの横顔を見て、ロシュは幸せな気持ちに浸りつつ、食事を済ませたのだった。
◇
白紅麗がここにきてから、実に一月が経とうとしていた。
最初の頃は警戒心丸出しの白紅麗だったが、流石に一月も経てば慣れてくるもので、今は普通に生活をしている。
ただ、衣服はリアムやロシュの持ってきてくれたものは着れそうにない――物理的な意味で――ものばかりだったので、今まで白紅麗が纏っていたものと同じようなものを用意してもらい、今はそれを身に纏っている。
相変わらず眠る時は首元の空いたものを着ているが、それを寝巻きなんだと言い聞かせ続ければ、もはや何に対して恥ずかしさを感じているのかすらも麻痺してきて、今では普通に使うこととなった。流石にその格好の時にリアムやロシュに見られるのは恥ずかしいため、部屋には入らないようとお願いをしたが。
リアムは、毎日のように白紅麗のために食事を用意してくれている。
最初は戸惑っていた白紅麗だったが、リアムの作ってくれる食事はどれも美味しく、そして、白紅麗の体調や食事量を慮った献立が組まれているため、無下に残すこともできず、結局なんだかんだと毎日ありがたく、美味しくいただいている。
そのおかげか、白紅麗の肌は健康的な色になり、体も全体的に女性らしい体つきになってふっくらとしてきた。
今までが異常なまでに細かったため、いつ倒れてしまうのかと思うほどだったが、最近はそれの心配もなくなった。
そして、一番の変化は――。
「
白紅麗が部屋の中で、柔らかな声でそう呼びかければ、ひょっこりと現れたのは、毛が真っ白なウサギと、逆に真っ黒なウサギだった。
二匹とも、まだ仔兎なのか、体は小さいけれど、どちらも真っ赤な瞳が印象的だった。
二匹は嬉しそうに白紅麗の足元まで駆け寄る。駆け寄ってきたその仔兎たちを、白紅麗は屈みこんで優しく抱き上げた。
「いい子にしていましたか?」
そう問いかければ、二匹とも、鼻をひくひくとさせて、ふすふすと返事をする。それにくすくすと笑いながら、白紅麗は二匹を抱えたまま庭に出た。
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