第66話
にっといたずらな笑みを作ったリアムをみて、白紅麗は目を見開く。背丈が大きいということと、見た目がとても美しい見た目をしているために、とても大人っぽい印象を持っていたけれど、今の彼はどこからどうみても少年のような無邪気さを感じられる。
その藤色の瞳が見開かれたのをみて、それでもリアムは行動を止めることなく、掴んだ白紅麗の手首を自分の方へと引っ張る。
「あ……っ!?」
かすかな声を上げた白紅麗は、次の時にはリアムの腕の中にいた。
体を完全に傾けた白紅麗はそれでもあまり寄りかからないようにという無意識で、掴まれていない方の手をリアムの胸に当てている。
手のひらから感じるリアムの暖かな体温と鼓動に、顔がかっと赤く染まる。
それを見て満足そうにしたリアムは、しかし次の瞬間には白紅麗を抱き上げていた。
「えっ!?」
ずりっとそのままの体制で引っ張られたかと思った次の時にはなぜか横抱きにされている。
背中と膝の裏に人の体温を感じて、白紅麗は羞恥でどうにかなりそうだった。
「……っ、お、下ろしてくださいっ!」
「なぜ?」
「なぜって……、わ、私は自分で歩けます!」
「うん、知ってる。けれど、着いてくる気はなかったんでしょう?」
「……!」
「だったら、強硬手段を取らなきゃね」
「で、ですが……!!」
「せっかく頑張って作ったのに、全てが無駄になるのは流石に悲しいからね。だから、連れて行くよ」
「で、でしたら、ちゃんと自分で歩きます!」
「嫌だ」
「!? な、ど、どうしてですか!?」
「我が、君に触れていたいから」
優しい声音に、優しい銀の瞳で見つめられながら、そんなことを言われれば、誰だって顔を赤くするに決まっている。しかし、それでも白紅麗は何とか下ろしてもらおうと足掻いた。
「お、重いでしょう!? ですから、下ろしてください!」
「……それ、本気で言ってるの?」
「……!」
突然、驚くほどに真剣な瞳で見つめられ、白紅麗は言葉を詰まらせた。リアムは、真剣な表情で言葉を続ける。
「本当に、自分が重いと、そう思ってるの?」
「…………」
「流石に、その言葉は否定させてもらうよ」
少し怖いと感じるほどの威圧に、白紅麗は黙るしかできなくて、結局、リアムに連れられて食堂まで来てしまった。
中では、深紅を持つ少年のロシュが待ち構えている。
それに驚きを感じつつも、白紅麗はリアムに抱きかかえられたまま椅子の上に降ろされる。
「さて、じゃあ、食べて見て?」
そう言われて、白紅麗は初めて視線を下に向ける。そして、驚きで目を見開いた。
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