第60話
「彼女と話に来たの?」
「「! う、うん、そう!!」」
「そうか、なら、入って――」
「でしたら、私は出て行きます」
「え?」
「「!!」」
「その子たちが、この部屋に入ってくるのなら、私はこの部屋から出て行きます」
「…ちょっと、よく分からないんだけど?」
白紅麗のその強い拒絶に、気分を害したのか、彼女の言葉と視線が鋭くなる。しかし、先ほどまで怖がっていたはずの白紅麗はまるでそれが嘘のようにしっかりと彼女の方を見て言葉を出している。
それに多少驚きはしたけれど、それであってもこの双子をそこまで拒絶するのは如何なものかと思い、彼女の方も負けじと白紅麗を睨むように見つめた。
しばらく、無言の空間がその場を支配する。
しかし、それも第三者によって壊された。
「――レプレ、レプス! ここに来ちゃダメって言っただろうっ!?」
「「……っ、ロシュ!!」」
「何やってるんだ、君たちは……っ」
「「だ、だって……!」」
「早く出て、二人とも」
「「……でも、……ぼく達は……」」
ロシュの催促に、それでも渋る双子を見て、白紅麗はそれでも無関心な瞳で見つめている。まるで感情が剥がれ落ちたかのような表情だった。
それを見て、竜人の彼女は驚きに目を見開く。
何が目の前の少女をここまで追い込んだのだろうか。
「……私が、出て行きます」
声を出す。体を動かす。けれど、誰もいない方へと体を移動させて、寝台から両足を揃えて下ろす。
そして。降りた白紅麗の目の前には、窓。
――手を伸ばして、鍵を開ける。
そこまで来て、ロシュがハッと反応して駆け出す。
「だめっ!!」
「!!」
驚くほどの速さで、白紅麗の背後にたち、そして背後からその体を抱きしめる。
抱きしめてから、ロシュはその真紅の瞳を見開いた。
驚くほどに、細い。ある程度体型がわかってしまう衣服を身につけていてもなお、それよりも細く感じられる。
だからこそ、思わず腕がこわばってしまった。
「…………気持ち悪い、ですか」
「え……?」
「こんな、体……。こんな髪……、こんな瞳……っ!!」
「ちょ、落ち着いて……!」
「日に焼けていない肌も、黒くないこの髪も、黒くないこの瞳も……っ!! 私は、全てが大嫌いっ!!」
「何を言って……っ、いいから、落ち着いて!」
「気持ち悪いっ、なんで、私がこんなにも……っ!!」
「白紅麗っ!!」
名前を呼ばれて、ハッとする。白紅麗は、透明な板に映る自分を見つめた。そして、くしゃりと表情を歪める。
「………………あい、たい……」
「え?」
「…………会いたい、あなたに……あなたに、会いたいの……璃…………っ」
「…………」
「どうして……、私は、あなたのそばにいられないの……」
「……」
「こんなにも、怖い…。怖いの、璃、怖い……っ、側にいて……お願い……白雪姫のところに、行かないで……っ」
両目から、涙が出てぼたぼたとこぼれ落ちてくる。手で拭うこともせず、ただ流れるに任せて。両頬を濡らして、悲痛な声で訴えかける。
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