第53話

「リ、リアム様、どうして……?」


「なんで、ボク達を怒るの?」


「ボク達、何悪いことなんてしてない!」



 必死に言葉を紡ぐ二人を見つめるリアムは、それでもその冷たい瞳を逸らすことなく、二人を見つめている。


 見つめられている二人は、うっと言葉を詰まらせた。



「本当にわからない?」


「「……」」


「それなら、仕方がないね。ここは君たちがいても仕方のない場所だ。出て行ったほうがいい」


「!? リアム様っ!?」


「なんでっ!?」


「なんでも何も、彼女はここに置く。そう決めている。彼女と関わりを持ちたくないのなら、ここから出て行くのが一番だ。大丈夫だ。お前達二人なら、ちゃんと拾ってくれる仲間がいるから」


「いやだっ」


「リアム様っ」


「我も嫌だ。彼女を傷つけるものは、なんであっても許せない」



 その言葉に、白紅麗は目を見開く。この人は、一体何を言っているのだろうか。


 白紅麗が、思わず声を漏らす。



「……私は、そのように言ってもらえるような人間ではありません」



 ぽつりと。そう溢れる。


 それはほとんど無意識で、白紅麗はそれでも、言葉を止めることはなかった。



「いいのです。慣れておりますから。どこにいたとしても、私は醜いと言われます。この髪色も、この瞳も。人間の私がこんな色を持って生まれてきたのがいけなかったのです。だから、やり直したい……」



 俯く。自分を抱きしめているその腕は、男性のもので、筋張っている。力強いその腕に囲われているはずなのに、そのぬくもりは、白紅麗が求めたいたものではない。


 白紅麗の欲しい温もりではないのだ。



「一度、この命を絶たなければ。そうしなければ、私は、いつまでも醜いと言われ続ける。もう、嫌なんです」



 せっかく、掴みかけた幸せは、この容姿のせいで、消えていったのだ。


 暗闇に叩き落とされた。


 もう、何も見えない。



「……私は、消えて無くなりたい、だけなのに……」



 心の底からの、言葉。叫び。


 白紅麗のその言葉を聞いて、ロシュが表情を歪める。



「……僕は、君が消えるのは嫌だ」



 だからこそ、言葉を紡ぐ。



「僕は、君のおかげでこうやってここにいられる。リアム様の元に居られる。君が居なかったら、こんな当たり前の幸せも、僕にはなかった」


「……」



 ロシュが何言っているのか、白紅麗には理解できない。


 落とした視線をそのままに、白紅麗は疑問をぶつける。



「私と、あなた様は、なんの接点もありません」


「いいや、ある」



 そう断言してきた声に、白紅麗は思わず顔を持ち上げて相手を見る。真紅の色を持った少年は、その真紅の瞳でじっと白紅麗を見つめている。

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