第74話

そんな萩乃と言葉をかわしながら、白雪たちはダーランの案内で彼らの住処に案内してもらったのだった。


 白雪はダーランが背中に乗れといってきたのを丁寧に断ったのだが、白雪が背中に乗らないのなら連れて行かないというよくわからないことを言われてしまい、戸惑いながらも、あの時に優しくしてくれた大人の動物たちに会いたいという思いが強く、結局白雪はダーランの背中に乗せてもらい連れて行ってもらうこととなった。


 萩乃もと思い声をかけたのだが、ものすごい笑顔で断固断ってきたので、それ以上何も言えず、白雪だけが乗っている。


 道中は萩乃がダーランと並んで歩くようにしており、その後ろに“鬼さん”がついてくるという感じだった。


 見たことのある景色に白雪がその深紅の瞳を輝かせているとダーランの帰還に気づいた大人の動物たちが振り返り、そしてダーランの背中ににっている白雪を目にして驚いていた。



『まあ、あなた!』


『こちらに来ていたのか?』


「少しぶりでございます。少し用事があってこちらに伺った時、ダーランさんに会いまして、ご迷惑かと思ったのですが、来てしまいました」


『迷惑だなんて思ってないわ。また会えて嬉しいわ、“六花”』


「えっ」



 聴き慣れない自分の呼称に驚いて真紅の瞳を見開いてしまう。


 白雪の反応にくすくすと笑いながら、彼らは言った。



『ここにいるのは動物なのよ? あなたの声の判別くらいつくわ』



 そう言われて、白雪はなぜダーランが白雪の口から名前を言えと言ったのか理解した。


 白雪の声を知っている動物たちがいるここで、白雪の声で説明と名を名乗ればそれらは動物たちに伝わって自然と彼らも白雪ではなく“六花”と呼んでくれるのだろう。


 すごいなぁ、と感心していると突然ダーランがぴょん! と飛び跳ねたため白雪は驚きで声を上げてしまう。



「姫様!?」


「だっ、大丈夫!」


「ダーラン様っ!」


『……お前の周りの人間はなんなんだ?』


「は? いえ、今はそんなことはどうでもいいことですわね。それよりも、危ないじゃないですか!」


『ちゃんと落ちないように配慮はしたぞ』


「当たり前です!!」



 萩乃とダーランががみがみと言い合っているその様子におろおろとしながら、白雪はもしかしたらダーランの背中から降りた方がいいのかもしれないと考え、そろりと体を動かして降りようとすると、ダーランが再び、ぴょん! と跳ねる。



「きゃっ!」


「ダーラン様!!」


『降りようとした六花が悪い』


「えっ!?」


「……六花様? 降りようとしたと? 何故?」



 え、なんで私責められてるの、と思いつつ、白雪はもごもごと言い訳を重ねた。

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