第59話
*
何をどう掛け違えたのだろうかと、頭を悩ます日々が続いている。
それは、白雪という人の少女をこの場から解放し、代わりにここに残ると言ってここに残った少女の態度の変化だった。
あんなにも謙虚にいた少女は、今は一転し、むしろ傲慢な態度をとることが増えてきた。
事あるごとに、ここで働いている使用人を呼びつけて、なにかと手伝わせているという話を聞いたときは、そんなことをする子ではないと思い込んでいたため、あまり気にしていなかったが、それは日毎、その声が大きくなり、少しだけ様子を見がてら、与えた部屋へと向かっている最中に、それを目の当たりにする。
(……ここの調度品は、こんなにも絢爛な作りの物ではなかったはずなんだが……いつの間に変えたんだ?)
客室に向かう回廊の途中途中、見たことのない調度品を目の当たりにし、首を傾げる。しかし、とりあえずそのことは気にしないようにしようと、足を進めていく中で、皇はどうしても眉をしかめていくこととなる。
見たことのない調度品がずらずらと並ぶ回廊は、あきらかに現世からこの異界に留まらせた少女に与えた部屋へと続いている。
最初は、ここにいる使用人たちが、勝手にしたことなのだろうと思った。しかし、それは“客人”の部屋から聞こえてきた声によって打ち消されることとなる。
「それは嫌! いやよ!! もっと違うものがいい!!」
「ですが、これはとても貴重なもので、あなたが欲しいと言ったから、無理に取り寄せたものなのです」
「なんでいうことを聞いてくれないの!? あたしは、それが気に入らないと言ったの!」
「で、ですから……」
「もういや! あなた使えない!! どっかいって、出てってよ!!」
駄々を捏ねる子供のような言葉に、皇は思わず足を止める。
聞いたことのない柚葉の声に、言葉に、思考が停止してしまう。
しかし、ハッとして少し早足にそちらに向かう途中、部屋から追い出されただろう使用人の一人が皇の存在に気づき、目を見開く。何かを言おうと口を開きかけて、しかしーーすぐにグッと引き結ぶように閉ざしてしまう。
皇は驚き、それでもどうすればいいのかわからずに戸惑ったような視線を送ることしかできなかった。
気づけば、扉に前まで来ていて、外からも中からもその存在が認知できるようになる。
「ーー皇様!」
「!!」
まるで、甘えるような声。むけた視界に映った柚葉は、スメラギの知っている彼女とはかけ離れた存在と成り果てていた。
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