第47話



 結局、“鬼の道”を使い皇たちは御殿に帰ってきた。多少時間はかかってしまったけれど、まぁ許される範囲だろうと考え、そのまま二人を連れて、皇と大和は大広間まで来ていた。


 白雪が口を開いた。



「あの、私たちは元の場所に返していただけるのですか?」



 白雪のその言葉に、皇は胸の奥が少しだけ痛んだような感覚に襲われたけれど、気のせいだと思い、白雪の言葉に頷いた。



「もちろんだ。白雪と柚葉は責任を持って“あちら”に帰す」


「そうですか……良かった……」


「……」



 白雪の呟きに、皇の胸はまた痛みを訴えてくる。それに内心で首を傾げながら皇は大和をちらと見る。心なしか少ししょんぼりとしているように見えて、少しだけ笑ってしまう。



「柚葉、帰れるそうよ。よかった、萩乃は大丈夫かしら……」


「……」


「柚葉?」


「……本当に、あそこに帰るのですか?」


「え?」



 柚葉の言葉に白雪は首をかしげる。それは、皇も大和もだ。柚葉の言葉だけを聞けば、彼女は帰りたくないと思っているようにしか思えない。


 それは、白雪も感じたのだろう。そっと言葉を返した。



「柚葉、どうしたの?」



 白雪のその優しい声音に、それでも柚葉の癇に障ったのだろう。


 大声が上がる。



「どうして帰らなければいけないのですか! あの家に帰れば、またあなたは否定される、拒絶される、罵倒だって!! それなのに、どうして……!!」


「……」


「ここに、残らせてもらいましょう、姫様」



 柚葉の言葉に皇と大和が目を見開く。



「だって、ここにいれば少なくとも拒絶されない、否定もされない! 皇様だって守ってくださるはずです!そうでしょう、皇様!?」


「柚葉」


「何があっても守ってくれる人のところにいて何がいけないのですか!?」


「口を謹みなさい、柚葉」


「でも、姫様……!!」


「――そんなにも辛いのなら、外してあげるから」


「……ぇ?」



 白雪のその一言に、柚葉の興奮が一瞬で吹き飛んだ。



「あなたがそんなにも辛い思いをしていたのを知らなかったの。ごめんなさい。でももう大丈夫よ。あなたの望み通り、外してあげるから」


「ひめ、さま……なにを……?」


「あなたにそんなにも負担をかけているつもりはなかったけれど、だめね。やはり、あちらに戻してもらったら、萩乃も一緒に外しましょう。これ以上、二人に迷惑をかけることはできないものね」



 白雪の言葉に反論したいのに、白雪がそれを許さない。


 柚葉が焦っていると分かっているのに、それを無視している。

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