第44話
そして声をかけた。
「いつまでそんなことをしているつもりだ? 仲間が怖がるだろう」
そう声を発すれば一番最初に反応したのは皇だ。すぐに口を閉じ、じっとダーランを見つめる。鬼の特徴である紅の瞳と青灰色の瞳が交わり、お互いに何も言わずにただただ黙していた。
二人の様子にどうすればいいのかわからなくて、柚葉は無意識に白雪ではなく大和へと寄っていく。柚葉の動きに驚き、白雪は思わず目を見開いて見つめてしまったが、これはどちらかというと良い方へと行っている気がしてあえて何も言わなかった。
大和はどぎまぎとしているが、特に拒絶する色も見られない。
白雪は改めて、皇とダーランを見る。
二人はいまだに動かない。
少し考えてから白雪は二人から少し離れようと体を動かす。確か、近くに小さい仔達がいたはずと思い、背を向けた時――。
「……えっ」
がしっ、と手を掴まれる。
そろりと後ろを振り向けばそこには皇とダーランが手を伸ばしていた。
もちろん、二人の伸ばしたその手が掴んでいるのは白雪の手だ。二人の行動に驚いたのは白雪だけではなく、大和も柚葉も、そして白雪の手を掴んでいる本人であるダーランが一番驚いていた。
「ダ、ダーラン様…?」
「……つい、手が伸びた。すまない」
「いえ、それは別にかまいませんが……」
パッと手を離してダーランがすぐに謝罪をするのを聞きながら、不思議な人だなと考える。
「それよりも、だ。スメラギ、どうして“人”がこの異界にいたんだ」
すっと話を差し替えて、ダーランは皇に疑問を投げる。不自然な話の変わり方だったけれど、皇もダーランの疑問に答えた。
「こっちの問題児がちょっとな……」
「ああ、“朱音”か?」
「さすが。その通りだ。一応手を貸した奴らは牢に放り込んでおいたが……」
「朱音の信者って多いからな」
「不思議とな……もっと質素な子の方がいいんだが…俺は」
「鬼のくせに質素とか言っているお前が一番変わっているがな」
皇とダーランの会話を聞きながら、白雪は皇にも手を離してもらおうともぞもぞと動いていたけれどどうしてか皇は手を離してくれない。
どうして、とおもっているとぐっと手を引かれて体勢を崩す。白雪はそのまますっぽりとスメラギの腕の中に収まってしまった。
「す、皇様、あの……ッ!」
「危ないだろう」
「そ、それでもここまで近くなくても良いと思うのですが.……ッ!!」
「心配なんだ」
そうだとしても、こんなにも体が密着しているとどうしても落ち着かない。頬を赤らめて腕の中に大人しく収まっている白雪を見て、皇は逆に落ち着いた。
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