第40話

恥ずかしさに焦っていると周りにいる動物たちが声をあげた。



『あー、ダーランの人の形を久しぶりに見た!』


『本当だ〜、でも急にどうしたの〜?』


「白雪の真似だ」


『まねっこ〜』


『ダーラン、ふさふさしてない〜』


「人だからな。でも、頭はふさふさだろう?』


『触る〜』


『触らせて〜』


「後でな」



 周りにいた動物たちがわらわらと相手の方へ行くのをびっくりしながら見つめる。そして、もう一度相手をまじまじと見つめた。


 銀の髪は、ダーランのあの毛皮の色に少し似ていないだろうか。


 青灰色の瞳も、ダーランのあの瞳と同じような気がする。


 声も口調も、ダーランと同じような気がする。



「……ダーラン、さん……?」



 そっと呼びかければ、きちんと反応してその青灰色の瞳で白雪を見つめてくれた。



「なんだ?」



 困惑を隠せなくて、白雪はそれでも口を開いた。



「……これは、どういうことなのでしょう……?」



 そうなるよね、と動物たちが思う中、ダーランが一言。



「その目にうつっていることが全てだ」



 その瞬間、周りの動物が反応し、“大人”と呼ばれる動物たちがダーランを後ろから引っ叩いて怒ったのは仕方のないことだった。





 再び案内されたのは、人が住むのと変わらない家屋だった。


 思わずきょろきょろと辺りを見回すと一緒についてきてくれた“大人”の動物たちがクスクスと笑っているのが聞こえてさ恥ずかしくなって俯く。



『珍しい人の子ねぇ』


『あんたが住んでいるところとそう変わらんだろうに』


「す、すみません……」



 反射的に謝罪を口にしてしまうと、“大人”の動物たちが不思議そうに自分を見ている視線に、身を小さくしてしまう。


 その様子に“大人”の動物たちのほうが少し困ってしまった。



『あの、私たちは別にあなたを責めているわけではないのよ?』


「は、はい……。分かっております」


『そんなにかしこまって話さなくてもいいんだぞ?』


「いえ、いえいえ! そんな……ッ!」


『落ち着いて。あなたが話しやすいように話してくれて構わないから』



 そんな会話をしているのを聞きながら、ダーランが先導して歩きながら、言葉を紡いだ。



「どうやら、人の世では窮屈な生活をしていたらしい。しかも、本人にその認識がない」


『あら、そうなの?』


「ああ。だから普通を知らないらしい」



 そんなにも自分はおかしいのだろうかと白雪は考えてしまう。けれど、“大人”な動物たちはその話を聞いてなぜか納得しているらしく、口には出さないほうがいいかなと判断して、白雪はてくてくとついていく。

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