第39話
*
ダーラン達の住処について、白雪は改めて周りを見渡す。
そこには、ここに来る道中でも見た、大小様々な動物達がお互いにじゃれあっていたり、仔どもたちが走り回っていたり、大人たちが談笑したり――“人”がいる場所と変わらない風景がそこには広がっていた。
『ついたな。白雪、お前たちも一度降りてくれ』
ダーランの言葉にハッとして、白雪は衣を気にしながらダーランの背中から降りる。降りると同時に周りを動物に囲まれてしまい、白雪はその場に座り込んで手を伸ばして動物たちを撫でていた。
しばらくそうしていた白雪だったが、そういえばと思い出し、ダーランを探す。ここまで乗せてくれたお礼を言わなければと思い、辺りを見回して、そして、ある一点で視線が固定され、体が固まった。
陽の光に反射する美しい銀の髪。交わった視線の先には青灰色の瞳。
紅の瞳を見開いて、じっと見つめてしまう。自分と同じように見つめている相手が身を動かす。それにびくりと反応してしまった。
白雪のその反応に、相手もぴくりと反応してその場に留まった。しばらく無言が続く。どう話しかければいいのかわからなくて、意味もなく視線をうろうろとさせていると、突然相手の人に名を呼ばれた。
「……白雪」
「え……?」
どうして名を知っているのだろうか。その疑問が出ていたのだろう、相手の人が少し息をついて言葉を続けた。
「俺だ。ダーラン」
「…………え?」
ぽかん、と相手を見つめてしまったのは仕方がない。と白雪は自分に言い聞かせる。
なにしろ、白雪は相手を全くと言っていいほど知らないのだ。驚くなという方が無理だ。それに、今ダーランと名乗った。あの大きな狼と同じ名前だなと現実逃避していると、相手の人が髪をがしがしと乱してそのまま近づいてきた。
その様子を呆然と見つめていると、ダーランと名乗った人は白雪のすぐ目の前まで来て、視線を合わせるためにしゃがみ込んだ。
「白雪」
「……あの……」
「驚かせて悪いな。お前と同じ人の形をとった方がいいかと思ったが、逆に警戒するとは」
「……ダーランさん……?」
「呼び捨てでいいと言っただろう」
「……あの、ダーラン様……」
「なぜ様付けに進化するんだ…。白雪、ダーランだ」
「いえ、その……」
おどおどとしながら、白雪は体を後ろにそらす。
「ん?」
しかし、白雪が体をそらせば、できた距離を埋めるようにダーランが近づく。
異性に近づかれるということに慣れていない白雪が頬を染めて、相手を直視しないように視線をそらす。
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