第34話

『だが、ここにいるということは“鬼の頭領”に許可されたのだろう?』



 狼だろうか。かっこいいと内心で思いつつ、白雪と記憶を探る。



「確かに、皇様にそう叫んでいただいた記憶はありますが……」


『スメラギ……ッ!?』


「? はい」


『あ、あんた、あの・・スメラギの客なのか……!?」



 狼がすごく驚いている。白雪は体を起こして狼を見つめた。



「あなたが言っている“スメラギ”様なのかはわかりませんが、私に許可を下さったのは皇様でしたよ?」



 そういって、白雪は狼を見つめる。


 その時、初めて辺りを見回して少し驚いた。



「まぁ……動物がたくさん……」



 周りには栗鼠や兎、狼の他にも様々な動物たちがいる。



「皆さん、仲がよろしいのですか?」



 白雪の質問に、動物たちは少し困惑する。そして、動物たちの心の声を、先ほどまで白雪と会話をしていた狼が代弁した。



『それよりも、あんたは俺たち動物が普通に話していることに驚いてくれ』



 周りにいる動物たちが、一斉に頷いたのだった。





『……ということは、あんたはあの“鬼姫”の生まれ変わりなのか?』


「どうなのでしょう。私は別に特別な力を持っているわけではありませんし、あなたたちのいう“鬼姫”様ほど有能ではありませんから……」



 事の経緯や、相手が動物だからということもあり、白雪な己の力のことを話した。もちろん、力の説明は皇にしたのと同じように。


 狼――名をダーランというらしい――が、むむ、と難しい顔をした。



『つまり、お前はその力をあまり使いたくない、ということか?』


「………………」


『? 違うのか?』



 ダーランの言葉に白雪は驚きを隠せないでいた。



「そんなふうに考えたことがなかったから……分からないわ……」


『……お前、どれだけ人間の世界で窮屈に生きていたんだよ』



 窮屈――そうなのだろうか。それすらも分からない。


 白雪が黙してしまったのを見てダーランはため息をつく。そして、その鼻先を白雪につけて、意識を自分に向けさせた。



『取り敢えず、お前に敵意や悪意がないのはわかっている。小さいやつらがここに集まっているからな。オレの方からスメラギに知らせてやるから、それまでの間はオレたちのところにいればいい』


「いいのですか? 私は人間なのに……」


『あんたが俺たちのことを差別していないと理解しているからな。但し、少しでも怪しい動きをしたら、その喉を噛み切ってやる』



 ダーランの言葉に目を瞬かせながら、白雪はこくりと頷く。

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