第34話
『だが、ここにいるということは“鬼の頭領”に許可されたのだろう?』
狼だろうか。かっこいいと内心で思いつつ、白雪と記憶を探る。
「確かに、皇様にそう叫んでいただいた記憶はありますが……」
『スメラギ……ッ!?』
「? はい」
『あ、あんた、
狼がすごく驚いている。白雪は体を起こして狼を見つめた。
「あなたが言っている“スメラギ”様なのかはわかりませんが、私に許可を下さったのは皇様でしたよ?」
そういって、白雪は狼を見つめる。
その時、初めて辺りを見回して少し驚いた。
「まぁ……動物がたくさん……」
周りには栗鼠や兎、狼の他にも様々な動物たちがいる。
「皆さん、仲がよろしいのですか?」
白雪の質問に、動物たちは少し困惑する。そして、動物たちの心の声を、先ほどまで白雪と会話をしていた狼が代弁した。
『それよりも、あんたは俺たち動物が普通に話していることに驚いてくれ』
周りにいる動物たちが、一斉に頷いたのだった。
*
『……ということは、あんたはあの“鬼姫”の生まれ変わりなのか?』
「どうなのでしょう。私は別に特別な力を持っているわけではありませんし、あなたたちのいう“鬼姫”様ほど有能ではありませんから……」
事の経緯や、相手が動物だからということもあり、白雪な己の力のことを話した。もちろん、力の説明は皇にしたのと同じように。
狼――名をダーランというらしい――が、むむ、と難しい顔をした。
『つまり、お前はその力をあまり使いたくない、ということか?』
「………………」
『? 違うのか?』
ダーランの言葉に白雪は驚きを隠せないでいた。
「そんなふうに考えたことがなかったから……分からないわ……」
『……お前、どれだけ人間の世界で窮屈に生きていたんだよ』
窮屈――そうなのだろうか。それすらも分からない。
白雪が黙してしまったのを見てダーランはため息をつく。そして、その鼻先を白雪につけて、意識を自分に向けさせた。
『取り敢えず、お前に敵意や悪意がないのはわかっている。小さいやつらがここに集まっているからな。オレの方からスメラギに知らせてやるから、それまでの間はオレたちのところにいればいい』
「いいのですか? 私は人間なのに……」
『あんたが俺たちのことを差別していないと理解しているからな。但し、少しでも怪しい動きをしたら、その喉を噛み切ってやる』
ダーランの言葉に目を瞬かせながら、白雪はこくりと頷く。
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