第17話
*
「……え、私に?」
柚葉の困惑気味の言葉を聞いて、白雪も驚いた。思わず聞き返してしまうくらいには動揺してしまったらしい。ぽかんとしている白雪を見つめて、柚葉も軽く困惑しながらコクリと頷いた。
「は、はい。“左京院のニノ姫を”と言われたのだと……」
「でも、私は公には認められていないはずなのだけれど……」
「それはおかしな話だと思いますが。……ですが、面会を求められているのは間違いなく姫様です」
「……そう。父は? 何か言っていたのかしら?」
「いえ……、むしろ、このことを伝えて来いと」
「……そう。なら、会うわ」
柚葉の言葉を聞き、白雪は父が今回の相手と白雪に接点を持たせたいのだと気づき、頷いた。
どうせ今回断ったとしても、この面会希望は白雪が頷くまで続くだろう。それならば最初から頷いたほうが後々の面倒にはならないはずだ。
そう思って頷いたのだが。
「ですが、姫様は病み上がりです。あまり無理をされるのは……」
そう。白雪が倒れてからすでに五日目になっていた。白雪はこの五日間、ずっと高熱かうなされ、今朝方ようやく熱も下がり、今日はようやくこうして床離して、ゆっくりと座って過ごしていたのだ。
柚葉が渋るのも無理はない。
その心遣いに感謝しながら、白雪は答える。
「でもね、ここで断っても無意味なのよ」
「?」
「だって、もう部屋のすぐ外にいらっしゃると思うから」
「えっ!?」
白雪の言葉に、柚葉が反応し、外につながる襖を見る。
白雪は苦笑しながら言った。
「ありがとう、柚葉。私の体のことを心配してくれて。けれど、すでにここまで来てしまった人を追い返すのも忍びないわ」
「無礼です。礼儀知らずにもほどがあります!」
「まぁ……それに関しては否定できないけれど……。それよりも、ほら。迎える準備をしてくれる?」
「いえ、追い返すべきですよ!?」
「今は外で萩乃が止めてくれてるのだと思うけれど、萩乃が追い返せないということは、左京院の名を使っても無理だったのよ。彼女、使えるものはなんでも使って相手を追い返すもの」
苦笑しながらそう言って、白雪は立ち上がる。白雪の行動を止めようと柚葉も動いたけれど、白雪の行動は早く、既にその手には扇子が握られており、外に出る準備がしっかりと整えられている。
ぐぅ、と喉の奥で呻きながら、柚葉ひ渋々白雪に従い、外にいるであろう人物を恨むことにしたのだった。
「萩乃」
「姫様…ッ!? いけません。許しません、ダメです。寝ていてください」
「……萩乃……」
あまりの連発に、白雪の方が少し笑ってしまう。そして、中から思い切り襖を開けた。
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