第13話
*
痛みを訴える体をなんとか起こし、目を擦る。
周りを見回しても、まだ少し薄暗い。柚葉も萩乃もまだ迎えにきていない。
ならば、もう少しだけ眠ろう。
痛みを訴える体を休ませなければ。
次起きた時には、もう体が痛いだなんて思わない。
だから――だから、お願い。今だけは、涙を流すことを、許して――。
*
「姫様、おはようございます、起きておられますか?」
そっとかけられた言葉に、まぶたを持ち上げる。朝日が部屋の中に差し込んで、眩しさを感じながら、白雪は体を動かす。痛みが多少軽減されていることにほっとしながら、ゆっくりと体を起こした。
「……おはよう。柚葉。まぶしいわ……」
「さ、起きてしまいましょう。朝餉の準備もできてますから」
「……うん……」
ぼんやりとしたまま返事をしつつ、体を褥から出し、衣を身につけていく。もそもそと一人でやっていると、くすりと小さな笑い声が聞こえてきて、そっと手を取られ、次いでその手が衣をどんどんと整えていく。
それを、やはりぼんやりしながら見つめ、白雪は眠気と戦っていた。
「……相変わらず、朝には弱いのですね、姫様は」
「まぁ、わたし達が来るまでは起こしにくるものもいなかったでしょうし。それに、もともと朝は弱い方なのかもしれないわ」
「……はぁ……、ぼんやりとしていらっしゃる姫様も素敵……ッ!」
「ねぇ、わたしのことを貶す前に、あなたも相当おかしいと気づくべきだと思うのよ。柚葉」
「何を言うの。萩乃ほどではないわ。問題ないわよ」
「そういう問題ではないと思うわ」
そう二人が話し込んでいることを、ぼんやりと宙を見つめている白雪が知るはずもなかった。
朝食を食べ終わり、部屋でのんびりと過ごしている白雪に、突然すぎる来客が来た。
何故、と疑問を持ちながらも、それでも逆らえる相手ではなかったため、白雪はおとなしく付き従うしかできなかった。
「……白雪、大丈夫よ。わたくしもついているわ」
「……は、はい……」
白雪とともに、姉の緋雪もついてきた。純粋に白雪を心配してなのか、彼女も白雪と同じように呼ばれたからなのかはわからない。
けれど、気づけば白雪を守るように隣をずっと歩いてくれている。
柚葉と萩乃は、白雪の背中を守るかのように、ぴったりと後ろについて歩いている。
「こちらへどうぞ」
にこりと笑みを浮かべ、先導していた男がその部屋に入るようにと促してくる。震えそうになる体をなんとか押さえつけながら、ゆっくりと踏み出そうとすると、何かを思い出したかのようにわざとらしく男が声をあげた。
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