第13話



 痛みを訴える体をなんとか起こし、目を擦る。


 周りを見回しても、まだ少し薄暗い。柚葉も萩乃もまだ迎えにきていない。


 ならば、もう少しだけ眠ろう。


 痛みを訴える体を休ませなければ。


 次起きた時には、もう体が痛いだなんて思わない。


 だから――だから、お願い。今だけは、涙を流すことを、許して――。





「姫様、おはようございます、起きておられますか?」



 そっとかけられた言葉に、まぶたを持ち上げる。朝日が部屋の中に差し込んで、眩しさを感じながら、白雪は体を動かす。痛みが多少軽減されていることにほっとしながら、ゆっくりと体を起こした。



「……おはよう。柚葉。まぶしいわ……」


「さ、起きてしまいましょう。朝餉の準備もできてますから」


「……うん……」



 ぼんやりとしたまま返事をしつつ、体を褥から出し、衣を身につけていく。もそもそと一人でやっていると、くすりと小さな笑い声が聞こえてきて、そっと手を取られ、次いでその手が衣をどんどんと整えていく。


 それを、やはりぼんやりしながら見つめ、白雪は眠気と戦っていた。



「……相変わらず、朝には弱いのですね、姫様は」


「まぁ、わたし達が来るまでは起こしにくるものもいなかったでしょうし。それに、もともと朝は弱い方なのかもしれないわ」


「……はぁ……、ぼんやりとしていらっしゃる姫様も素敵……ッ!」


「ねぇ、わたしのことを貶す前に、あなたも相当おかしいと気づくべきだと思うのよ。柚葉」


「何を言うの。萩乃ほどではないわ。問題ないわよ」


「そういう問題ではないと思うわ」



 そう二人が話し込んでいることを、ぼんやりと宙を見つめている白雪が知るはずもなかった。







 朝食を食べ終わり、部屋でのんびりと過ごしている白雪に、突然すぎる来客が来た。


 何故、と疑問を持ちながらも、それでも逆らえる相手ではなかったため、白雪はおとなしく付き従うしかできなかった。



「……白雪、大丈夫よ。わたくしもついているわ」


「……は、はい……」



 白雪とともに、姉の緋雪もついてきた。純粋に白雪を心配してなのか、彼女も白雪と同じように呼ばれたからなのかはわからない。


 けれど、気づけば白雪を守るように隣をずっと歩いてくれている。


 柚葉と萩乃は、白雪の背中を守るかのように、ぴったりと後ろについて歩いている。



「こちらへどうぞ」



 にこりと笑みを浮かべ、先導していた男がその部屋に入るようにと促してくる。震えそうになる体をなんとか押さえつけながら、ゆっくりと踏み出そうとすると、何かを思い出したかのようにわざとらしく男が声をあげた。

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