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第11話

 “異界”――そこは、人と共存することのできない、人ならざる者達が住んでいる“狭間の空間”。


 大昔は人とともに共存していたが、だんだんと人は己を過信するようになり、他を貶めていった。


 言葉を解し、話すことのできる動物達に、――「我ら人と同じ行為をするなど烏滸がましい」と言い、檻の中に閉じ込め、痛めつけたり、食事を与えず飢え死にさせた。


 人と同じように暖かな寝床で眠ろうとする獣達を、寒空に放り出し、凍えさせた。


 人の体を持ちながら、獣の一部をその身に宿していた者達に対し、人は――「愚か者。人と同じようになれると思っているのか」となじり、辱めた。


 もちろん、言葉を解する動物達も、獣人達も、怒り、悲しみ、人に対して攻撃を仕掛けた。


 しかし、彼らは人ほどの“知”を持っていなかった。


 それぞれの種族同士で村を作り、他にあまり干渉しなかった為だ。


 人の言葉を解する動物達も、ただ“分かる”というだけで文字を書くことはできない。“学ぶ”ということがよく分かっていなかったのだ。檻に閉じ込められ、痛めつけられた時にも、人でいう“悲鳴”ではなく、動物達の“鳴き声”だった。それを人は嘲笑い、馬鹿にした。


 人の体の一部を持つ獣人達は、“応用”することができなかった。火を使うことはできたし、事実、それで“料理”と呼ばれることはしていた。しかし、人はその火で様々なことをなしたのだ。敵を攻撃するために、矢に火をつけて、放ち、村の全てを焼き尽くしていく。


 村がなくなって仕舞えば、もうそこには住めないし、そもそも、人に見つかった時点でそこに住むことはできない。


 人は、己と違う生き物を見つけるたびに攻撃を仕掛け、排除していったのだ。


 動物はそのうちに、自らで“言葉”と“理解”を捨て、獣人達は人に見つからないよう、ひっそりと暮らすこととなった。


 じっと大人しくしていれば、人も何もしてこない。そう信じていたのだ。


 しかし、悲劇は終わらない。


 人は、どこまでも狡猾な生き物だった。自分たちとは違う彼らを見るたびに悲鳴をあげ、武力で相手を痛めつける。どこへ逃げても、いつまでも追いかけてくる。もう、逃げることを諦め、種族が滅びようとも抵抗するべきなのかと考えた。


 その時。



「我らがお前達の力となる。だから、諦めないでくれ」



 そう、声をあげた種族がいた。


 それは、人とほぼ変わらない姿の種族。違うのは、その一族は瞳がとても美しい紅色ということと、その額に二本の角があるということ。

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