第7話
外ではばたばたと走り回る音や、武器同士がぶつかり合う音などが響き渡っている。
“華の宴”も終わり、人もまばらになってきているはずだが、“鬼”というその存在に、男達が我先にと武功を立てるために集まってきているらしい。
白雪は自分のことを言われているわけではないと安堵しながらも、本当に鬼が“こちら”にきてしまったのかと不安になる。
柚葉と萩乃も顔を見合わせてから、白雪を見た。
「外の様子を見てきます」
「危ないので、ここにいてくださいね」
二人の言葉にこくりと頷き、それを見た二人はさっとその身を外に踊らせるようにして出て行った。
ざわめき、声が所々から飛んでいる外を気にしながら、白雪は二人が戻ってくるのを手を組み合わせ、まるで天に祈るようにして待つ。
どうか、怪我などせずここに戻ってきてと願っていると、白雪のいる部屋の襖が開き、誰かが入っていたと思ったら襖が閉まる。
何事かと思い白雪が体を動かせば、衣擦れの音が響く。それに反応したのは白雪ではない誰か。
ひゅっと息を飲む音が、何故か白雪の耳に届き、その動きを止めてしまう。
「お、お前……ッ、人間ッ!!」
「……え?」
「逃げられたと、思った……のに……ッ!!」
聞こえてくる声は、まだほんの子供のようだと白雪は感じる。
「早く、頭領のところに……戻らないと、なのに……」
その言葉が聞こえてすぐ、どさっと音が聞こえる、白雪は反射的に体を動かして見知らぬ誰かのそばに膝をついた。
手を伸ばし、その体に触れる。
しかし、すぐにその手は弾かれた。
「触る、な……ッ、人間風情が……ッ!!」
「…………」
ぎっと強い視線を受ける。白雪は一瞬だけ体を強張らせてから、ぐっと唇を噛んで、今まで意図的ではないにしろうつ向けていた顔を上げ、相手を見た。
「――ッ!? お前……ッ!?」
目の前の人物は、驚きに目を見開く。続けて何かを言おうとしているのを見て、白雪が先に言葉を封じた。
「誤解なさらないでください。私は――人間です」
「だ、だけど……!!」
「確かに、この瞳は、あなた方と同じ色を宿しておりますが、私は純粋な人間です。両親ともに、人です」
そう言いつつ、白雪は手を伸ばし、相手の素肌に触れた。
素肌がむき出しになっているところには擦り傷などが見受けられ、明らかに刃物で切りつけられた切り傷が、身体中のあちらこちらにある。そこからじわじわと血が滲んでいる。
それを痛々しい表情で見つめてから、白雪は目を閉じて意識を集中させる。
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