第4話



 私が全力で叫んだ日から一週間。


 そう、もう一週間もすぎてしまったのですよ。考えられる? 地球に戻れていないこの現実が辛すぎる。


 それに……。



「お嫁さん!!」


「うるさいっ!」


「俺が案内するし、俺が隣を歩く! そう言っているのにどうしていつも侍女を連れて歩くんだい!? それも、君の両隣を!!」


「あなたに隣に歩かれたくないからに決まってんでしょ。理解して」


「そんな理解はしたくない!」


「じゃあ一生そのままでいればいいわ」


「冷たいっ!?」


「通常温度よ」



 そんなことを毎日毎日繰り返し繰り返し、本当に飽きることなく言い続けているんだから、この男の執着も相当だと思う。


 私が頭を下げて下げて下げまくった結果、両隣にいる猫耳侍女さんたちが折れて、ようやく私は自分に身の安全を確保できた……と、思っていたわ。


 今日今この瞬間までは!!



「にゃうっ!?」


「お、お嫁さん、そんな可愛らしい声……っ!!」


「っ!! こっの、変態野郎ーーーっ!!」



 叫んで、私は渾身の力で相手を殴りつけたのだった。


 ……私はここに連れてこられた時、この変態に逃げられないようにとすでにこの世界のものを口にしていたため、体の作りがこの世界基準になったのだ。


 簡単にいうと、猫人間的な…。頭には三角の耳が生えてきているし、お尻にはあの猫特有の長くてしなやかな尻尾が生えている。


 そして、あの変態は事もあろうにその尻尾を根本方からきゅっと掴んでそのままするん、と撫で上げたのだ。妙ちきりんな悲鳴を上げたのも致し方がないというものである。



「ヨリ! ヨル! 騎士団塔!! そこに連れて行って!! 事情を説明して私の半径50メートル以上は近づかれないようにしてやる!!」


「半径50メートル!? 遠い、遠いよ!! せめて50センチ!!」


「身を守れないじゃない!! とにかく、騎士を一人貸してくださいって泣きついてくるーっ!!」


「お嫁さん待ってーっ!!」



 そうして、私は自分に身を守るためにと、騎士団に直談判に行き、泣き落としに成功して、若い騎士様を一人、私の護衛騎士として連れ歩く許可をもぎ取ったのだった。


 その際、変態がなにやら言っていたけれど、私が一言、「連れ歩くことを許可しないのならば二度とあんたとは会わない」ときっぱりはっきりと告げて、黙らせたのは、また別の話である。



「納得いかないっ!!」



 そう叫んでいたことは知っているなが、ならば納得するなと言い返したらそのままなにも言わずに黙ったので、胸がとてもスッとした。

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