第2話

そんな当たり前な疑問を持ちつつ、目の前で起こったことの理解が追いつかず、私は呆然と目の前のペルシャ猫を見つめていると、突然、ペルシャ猫がもくもくと煙に包まれる。


 えっ、何事!?


 そう思って、思わず体をベッドの上で後退させて距離を取る。


 目の前で起こっている光景を驚きで見つめていた私は、さらなる驚きに見舞われる。



「……そんなに積極的に抱きつかれてしまうと、流石の俺でも恥ずかしいよ?」


「………….……」


「でも、お嫁さんにそんなことをされたらやっぱり嬉しいね。さあ、もう一度抱き合おうじゃないか!」


「き……」


「“き”?」


「ぎゃぁぁぁあああああっ!! 変態ぃぃいいいいっ!!」



 渾身の叫びと、渾身の枕投げで、私は目の前に現れた男に攻撃をしたのだった。





「悪かったってば、開けておくれ、お嫁さん……」


「何頭悪いこと抜かしてんですか、一度爆発してください。そして私を元の世界に返してください」


「それは嫌だし無理だ!」


「無理じゃないです。いいから返せって言ってんのよ」


「だって、きみが眠っている間にこちらの世界の食べ物を食べさせておいたからね。きみはもうこの世界の住人だよ!」


「はぁっ!? 何勝手なことやってくれちゃってるんですか!?」


「きみがまだ幼い頃、俺はきみの世界で生きていたんだが、飼い主が何故か暴力的でね? 俺ペルシャなのに! で、身の危険を感じた俺が逃げ出したんだけど、俺ペルシャだからさ。手入れしてもらわないと毛むくじゃらっていうか、毛玉だらけになって美しさが保てないんだよ」


「なんか勝手に語りはじめた!!」


「美しくない俺は誰にも見向きしてもらえなくてね。結局、美しくないものには興味がないんだよね、人間は」


「いや、そうでもないけど?」


「だが、俺はきみという運命に出会ったんだ!」


「突然ぶっ込んでくるな、こいつ!」


「きみは美しくない俺にも優しくはにかんで、餌を与えてくれた。慣れない手つきで、どうしようもない毛玉だらけの体に触ってくれて、撫でてくれた。あの時きみが俺を救ってくれたから、俺はここにいるんだ!」


「話が飛びすぎててよく分からんが、私は小さい頃から猫ならよく助けてたわよ。野良猫になってる子たちを飼い手が見つかるように保護施設に連れてってたりしたからね」


「なにっ!?」


「別に驚くことでもないでしょう」


「きっ…きみは……っ!」


「なによ……」



 声が震えてるんだけど。なに、私はこれからなにを言われるの。

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