本編
第1話
気付いたら自分が全く知らないところにいた、なんていう小説は正直によく読んでた。だって面白いじゃん?
けどね。
自分がその状況になったら、流石に冷静ではいられないと思うのよ……、私。
「待って待って待って、どこどこどこどこ。意味わからん!」
叫んだ私にそれでも無慈悲に返される沈黙。やめろっ!
と、とりあえずここでじっとしていても仕方がないわ…。歩こう。てかここどこよ、本当に。森か? 森なのか? いや、なんで森……?
とりあえず、考えながらでもいいから歩こう。ここを抜けられると信じて。
さくさくさく、と足元の草を踏みつけながら私は黙々と歩く。……いつになったらこの森的なところを抜けられるんだろうか、怖いわー。
と。
「あっ、や、やっと見つけたー!」
「誰かいるっ!? 助かったぁ…っ!」
「俺のお嫁さーん!!」
「おっと、まさかの人違いでしたかー。さよーならー」
「ちょっと待って!? すっごい探し回ったんだから!」
「知るかぼけっ!! 私は今忙しいんだ!」
「道案内? 俺が引き受けるよ! 案内場所は俺のお城!」
「はいはいはいはい。それはどうもありがとうございました! それでは!」
「扱いひどっ!?」
お前に構っている時間がもったいないわ。
そう思ってました。まさか、まさか私に声をかけてきた“人”以外に誰かいて、その人に気絶させられるとは夢にも思っていなかったのである。
◯
「ん、ぅ?」
ぱちっと目が覚めてはじめに見えたのはなんとも豪華な天井。な、何あれ、何が描かれてるのか素人の私にはさっぱり分からん。よし、もう一度寝よう。
それよりも、このベッドめっちゃふかふか……気持ちいい…。
ふかふかをより堪能しようと、ころんころんと転がっていると、気づけばもふぅ、と今までに味わったことのないほどの極上のモフモフが顔に当たる。……めっちゃ幸せ……。
「きもち、ぃ……」
ぎゅうっと顔に当たっているものを抱きしめれば、もふもふがさらに気持ち良い。が、それがピクンと動く。
……えっ、動いた?
がばっと慌てて体を起こせばそこにいるのは一匹の猫。さらりと流れる毛並み、鋭い目はそれでも何故か優しさを含んでいて、心なしかなんだか照れているように見える。
毛足の長いこの子は、もしやペルシャ猫…? でもなんでそんな猫が私が眠っているベッドに潜り込んでいたんだろう。
猫って警戒心強いイメージがあるんだけど……?
思わず、じっとそのペルシャ猫をガン見していると、それが突然すくっと立ち上がる。
……えっ、二足歩行……?
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