第63話

「大事なものを……」




いやに胸が騒ぎたてた。




王子と魔王とお姫様……。




俺と健と祐希?




「言いたいことがわかるわよね?あなたがグタグタしているせいで祐希ったら教室から出て行ったのよ。今頃、中山みたいな狼と鬼ごっこ中かも知れない」




「……祐希が?」




そう言えばさっき教室に居なかった。




「それとも既に魔王様に連れ去られちゃったかもね?自業自得よ。ご愁傷さま」




「ごめん、佐々木さん。俺、祐希のこと探してくる」




佐々木さんにそう告げて直ぐに走り出した。




見つけなきゃダメだ。って想いが漠然と心の中を駆け巡る。




祐希……ドコにいるんだろう?




メイド服だし、まだ学校にはいるはず。









「ま、その絵本の作者って理恵子だけど」




佐々木さんがボソッと呟いた言葉なんて俺に聞こえるわけがなかった──。

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