第61話

「……うん?」




冷たい眼差しを向けてくる佐々木さんに引っ掛かりを感じながら、騒いでいるクラスメートの間を通り抜けて廊下に出た。




生徒がチラホラいて、誰かが通りすぎる度に俺と佐々木さんに視線を向けてくる。




当たり前か。



2人ともメイド服だし。




「篠田君」



「ん?なに?」




それまで俺に背中を向けて歩いていた佐々木さんは、立ち止まって振り向くと、仁王立ちで俺を睨んできた。




「中山がメイド服姿のユッキーを見て『興奮する~』って言いながら、抱きつこうとしてたわよ」




「……は?」




思わず眉間に皺が寄る。




ダメだ。祐希のことになると直ぐに反応してしまう。




「まぁ、理恵子が阻止したけど」




「そっか……」




抱きつかれていないなら……良かった。




「それより王子と魔王とお姫様のトライアングルって絵本を知ってる?」




「王子と魔王とお姫様のトライアングル……?」




どこかで聞いたフレーズだ。

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