第11話

「貸し出す……?」




「そう。こっちに戻ってくるまで賃貸として貸し出すの」




母さんは、まるで遠足の前の子供みたいに楽しみで仕方ないと言わんばかりに楽しそうに話す。




何がそんなに楽しみなのか、俺には解らない。




引っ越すことになれば、住み慣れた家を離れて友達とも会えなくなる。




もちろん祐希と健とも……。




「ちょっと待って。俺、もうすぐ受験なのに」




「悪いが、向こうの高校を受けてくれ」




あっさりとそう言い返してくる父さんにチクッと胸が痛くなる。




簡単に認められることじゃないのに。

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