第9話

「健には俺が後で注意しておくから……」




そう言った俺に、祐希は……




「うん……ゴメンね?もう大丈夫だから」




目に涙を溜めて笑った。




そんな祐希の姿に切なくなって、胸がグッと痛くなる。




いつも泣く度に俺に抱きついて来た祐希は、今はそんな素振りも見せなくて。




ふわふわの髪の毛も




ポロポロ涙を流す泣き方も




変わっていないのに。




顔だって面影もある。




でも、確実に俺たちは成長していて。




いつかは祐希は俺から離れて行っちゃうんじゃないかって不安になった。




だから……。




俺は……祐希の腕を引いて自分の胸の中に抱き寄せた。




「涼……?」




驚いた声を出す祐希に嫌われるんじゃないかって、怯みそうになったけど……。




「暫くこのままでいさせて?」




さらに強く抱き締めた──。

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