第86話
「バカね。」
「……え?」
「バカよ。祐希が好きでもない男とそーゆーことすると思うの?」
思ってるならお仕置きよ。
「……思わない。」
「もう、答えはわかるでしょ?誰にも奪われないうちに、さっさと自分の胸の中に閉じ込めてしまいなさい。」
「…………。」
「それから、祐希はそんな気がなくても樋山君は祐希のこと好きだと思うわよ?ぼやぼや、してたら奪われちゃうわよ。」
「俺もそう思う。健も祐希が好きって言ってたし……。いつか奪われそうで怖い。」
「樋山君が祐希を好きだって言ってたの?」
「1度だけね。祐希が好きだって言ったら俺も祐希が好きだって言ってたから。だから、ずっと2人は両想いだと思ってたし……。」
「……そう。なら余計にさっさと好きだって言うべきよ。樋山君にじゃなくて、祐希にね?」
じゃないと樋山君に奪われちゃうかも知れない。
「そうだね。覚悟決めるよ。」
篠田君はニッコリ笑って頷いた。
「頑張って。じゃぁ、里恵子は帰るから。」
そう言ってベンチから立ち上がって篠田君に手をひらひらと振って公園を出た。
安堵のため息を漏らしながら。
それにしても……中山やるじゃない。
少し中山の観察力を尊敬しながら夕暮れの道路を歩いて帰宅した。
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