第54話

「どうして………ここまでしてまで王子と新城さんを付き合わせたいんだよ?」




中山は顔を背けてボソっと言った。




「それは………秘密よ。」




私は唇に人指し指を押しあててクスっと笑った。




まさか祐希が何十年も片想いしてるだの、今はどんな関係だの、口が裂けても言えない。




「ま、いっか。ごちそうさま。」




中山はそう言って納得いかない顔を浮かべながらも同じくベンチから立ち上がって私の肩をポンと叩いた。




「いいえ。じゃぁ、私は帰るわ。」




「あ、送っていく。」




そのまま中山に手を振って歩き出したら中山も私の横に並んで歩き出した。




「送り狼にはならないでね?」




「ならねぇよ!こんな時間に女が1人でうろうろしてたら危ねぇからだ。」




ムキになって言い返すのが面白くて私は歩きながら中山をからかい続けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る