第48話

「別に。風にあたってただけよ。」




家が嫌で抜け出てきたとは言えなかった。




そんな弱さなんて見せたくない。




「そっか。」




中山はそう呟いてそれから何も言わずに隣にいてくれた。




少し居心地がいいかも知れない。




少し時間が経った後、中山が思い出したように口を開いた。




「りえこちゃんはさー、どうして彼氏作らねぇの?モテんのにさ。」




俯きながらそう言う中山に私は小さく笑った。




「里恵子は好きな人がいるからよ。」




「好きな人?」




中山は缶コーヒーの缶をごみ箱に捨てて目を見開いた。




「そう。好きな人。里恵子はユッキーのお兄さんが好きなの。もう片想いして2年目よ。」




「新城に兄貴いたんだ?2年目って告白しねぇの?」




「告白してるわよ。会う度に。でも、今日はっきり迷惑だって言われちゃった。」

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