第四章 契約

第44話

祐希の家から帰ってきた私はリビングの電気をつけた。




「ただいま……。」




言ったところで返事なんて返ってこないのはわかってる。




でも、言わずにはいられない。




静まりかえったこの家では、何か言葉を溢さなきゃ静寂に押し潰されそうになる。




また、今日も1人。




冷たくて凍えそうなこの家で1人で夜を過ごさなきゃイケないもの。




テーブルに置いてあるお金とメモが目に入る。




何十回と見馴れたそれに嫌気がさす。




『遅くなるから。』




書かれていた言葉はいつもと全く同じ。




世界で1番嫌いな言葉かも知れない。




辛い




苦しい




寂しい




いろんな感情を一気に生み出す。




息苦しい




息が詰まる。




顔が歪む。




こんな家にいたって全身で辛さが溢れて零れて落ちて疲れるだけ。




私はテーブルに置かれていたお金を握り締めて鞄の中に放り込んだ。




1人で過ごす夜なんてイヤ。




私は家を飛び出した。

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