第四章 契約
第44話
祐希の家から帰ってきた私はリビングの電気をつけた。
「ただいま……。」
言ったところで返事なんて返ってこないのはわかってる。
でも、言わずにはいられない。
静まりかえったこの家では、何か言葉を溢さなきゃ静寂に押し潰されそうになる。
また、今日も1人。
冷たくて凍えそうなこの家で1人で夜を過ごさなきゃイケないもの。
テーブルに置いてあるお金とメモが目に入る。
何十回と見馴れたそれに嫌気がさす。
『遅くなるから。』
書かれていた言葉はいつもと全く同じ。
世界で1番嫌いな言葉かも知れない。
辛い
苦しい
寂しい
いろんな感情を一気に生み出す。
息苦しい
息が詰まる。
顔が歪む。
こんな家にいたって全身で辛さが溢れて零れて落ちて疲れるだけ。
私はテーブルに置かれていたお金を握り締めて鞄の中に放り込んだ。
1人で過ごす夜なんてイヤ。
私は家を飛び出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます