第22話
部屋を出た私と樋山君は祐希のお兄さんの部屋に向かった。
その距離なんて一瞬で時間にしたら30秒も掛かっていないと思う。
でも、その短い距離でさえ凄く長く感じた。
「お前さ、裕也のこと好きなの?」
樋山君が楽しそうに口もとを吊り上げて笑う。
「さぁ?ユッキーの"お兄さん"にはまだ会ったことがないから。わからないわ。」
そうわからない。
"お兄さん"には会ったことがないんだもの。
「じゃーどうして会いたいなんて言うんだよ?」
樋山君は不思議そうな顔をする。
不思議でしょうね。
会ったこともない人に会いたいだなんて。
でも、会ったことがあるかも知れないでしょ?
「確かめたいのよ。」
そう確かめたいの。
「何を?」
「真実を……かしら?」
怪訝な顔をする樋山君に私はにっこり笑った。
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